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リハビリコラム

2022-08-06 17:29:00

運動失調の検査、どうしたら良いの?

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムでは運動失調の検査の1つ
SARAについてを
解説したいと思います。

 

 

運動失調とは、マヒはないものの
腕・手や脚の運動の調節がうまく
行えなくなる症状のことです。


主に脳卒中、多系統萎縮症、多発性硬化症の
患者さんにみられる症状です。


そして原因によって小脳性・脊髄性・
前庭性・大脳性などに分類されます。


従来リハビリで行う検査として、
『鼻指試験』や『踵膝試験』『回内・回外試験』
などが行われていましたが、
患者さんの
経過を追ったり、
リハビリの効果判定を
行うには難しいものがありました。

 

 

そこで運動失調を定量化・包括的に
みるための検査が開発されました。


International Cooperative Ataxia
Rating Scale『ICARS』です。


①姿勢・歩行障害
②運動機能
③言語障害
④眼球運動障害


この4つの障害に分け
、全19項目の
検査を行います。
100点満点で、点数が高いほど、
運動失調の程度が重度であることを
示します。


詳しく運動失調を検査することが
できる反面、検査項目が多いことで
すべての検査を終えるまでに
時間が要することが欠点でした。


そこで開発されたのが、
Scale for the Assessment and 
Rating of Ataxia 『SARA』 です。


①歩行
②立位
③坐位
④言語障害
⑤指追い試験
⑥鼻指試験
⑦手の回内・回外試験
⑧踵脛試験



この8項目の検査を行います。
40点満点で、ICARSと同様に
点数が高いほど、運動失調が
重度であることを示します。

 

 

Choi らの報告では、
退院時のmRS(重症度)は
SARAの得点とTCT(体幹の検査)と
関係があることがわかっています。


さらにSARAの得点は
Berg Balance Scale(バランス能力)、
Timed Up and Go Test(歩行能力)とも
関係性があるとされています。


mRSは0(障害なし)から5(重度)・
6(死亡)の7段階で重症度を評価します。


Kimらの報告によれば、SARAの得点は
ADL(日常生活動作能力)と関係性があるとも
言われています。
加えて『カットオフ(基準値)』も
算出されています。



【歩行】
独歩自立:8点以下
4支点杖歩行自立:11.5点以下
歩行器歩行自立:12.25点以下


【ADL:日常生活動作の自立度】
軽介助:5.5点以下
中等度介助:10.0点以下
重介助:14.25点以下
全介助:23点以上

 

 

症状によってリハビリの検査を
行うことで目標を達成するための
課題もみえやすくなります。


そしてICARSやSARAなどの検査ツールを
用いることで、運動失調を定量化し
包括的に検査することによって、
症状の経過をみたり、リハビリの効果判定を
行うことができます。


検査には、利点と欠点が存在するので、
検査を組み合わせて行い、原因を突き止める
ことも大切なのかなと思います。


また必要以上の検査を行うことは、
患者さんの負担になりかねないので、
検査を選ぶ力というのもリハビリ専門職に
求められている気がします。

 

 

本コラムでは運動失調の検査の
1つであるSARAについてを
解説しました。


本コラムが少しでも皆さまの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年8月6日)
(更新日:2024年5月23日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献

1)
Choi SW, Han N, Jung SH, Kim HD,
Eom MJ,Bae HW.
Evaluation of Ataxia in Mild Ischemic Stroke
Patients Using the Scale for the Assessment
and Rating of Ataxia (SARA).
Ann Rehabil Med. 2018 Jun 27;42(3):375-383.
doi: 10.5535/arm.2018.42.3.375.
PMID: 29961735; PMCID: PMC6058584.

2)Kim, Bo-Ram et al.
“Usefulness of the Scale for the Assessment and
Rating of Ataxia (SARA) in Ataxic Stroke Patients.
” Annals of rehabilitation medicine vol. 35,6 (2011):
772-80. doi:10.5535/arm.2011.35.6.772

 

 

 

 

2022-08-05 16:12:00

脳卒中の患者さんの肩の痛み。その危険因子とは?

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
肩の痛みの危険因子についてを
解説したいと思います。


今回は肩の痛みの危険因子を研究した
Kimらの論文をご紹介したいと思います!

 

 

この研究では・・・
脳卒中の患者さんを対象として
腕の運動、可動域(動く範囲)、
痙縮(けいしゅく)の程度など
肩関節に
関わる検査が、発症後
1ヶ月、
3ヶ月、6ヶ月と経過を追って
実施されました。

 

 

その結果・・・
肩関節の痛みの発生率は、
1ヶ月時点で31%
6ヶ月時点では54%でした。


そして・・・
発症6ヶ月時点で
肩関節の痛みがある方は、
(痛みを生じていない方に比べて)
①年齢が70歳未満
②腕のマヒが重度である
②棘上筋の炎症・断裂がある


この3つが当てはまると
いうことがわかりました。


※棘上筋とは?
肩関節の深いところにあって
主に肩を外に広げるために働く
小さな筋肉です。


ちなみに発症後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の
時期によって肩関節の痛みに関係する
要因に違いがあることもわかっています。

 

 

少なくともこの期間は肩関節を
痛めないようにするために注意を払い、
リハビリを行うことが必要なのかも
知れません。

 

 

【私が気になる点】
※少しややこしい表現となることを
 お含みおきください。


①肩関節痛への影響の程度をみるために
「オッズ比」を算出しています。
オッズ比の場合、95%信頼区間が1を
またぐか否かが大切な判断基準になります。
(またぐ場合は影響があると言えない)


棘上筋の炎症・断裂をみると
オッズ比の信頼区間が1に近いところまで
幅広いのが気になります。
つまり影響があると言い切れない
場合もあるということです。


②この研究では6ヶ月まで経過を
追っていましたが、それ以降は
どのような傾向を辿ったのか
気になるところです。

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
肩の痛みの危険因子を解説しました。


本コラムが少しでも皆さまの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年8月5日)
(更新日:2023年6月18日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献
1)Kim YH, Jung SJ, Yang EJ, Paik NJ. Clinical and
sonographic risk factors for hemiplegic
shoulder pain: A longitudinal observational study.
J Rehabil Med. 2014 Jan;46(1):81-7.
doi: 10.2340/16501977-1238.
PMID: 24129640.

 

 

 

 

2022-08-04 10:54:00

脳卒中患者さんの歩行速度とバランステストの関係性とは?

 

こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行速度とバランステストの関係性を
解説したいと思います。


今回は歩行速度とバランス能力との関係性を
研究したMadhavan らの論文を
ご紹介したいと思います。

 

 

脳卒中を患った方で、少なくとも
5分間は歩行可能な方を
対象として、
ゆっくり歩く方(0.8m/sec未満)と
速く歩く方(0.8m/sec以上)で
分けています。


※0.8m/secとは1秒間に80cmの
速度です。


バランス能力の検査として
・Mini-BESTest
・BBS
この2つを採用しています。


※mini-BESTest=
Mini-Balance EvaluationSystems Test:
ミニベステストと読みます。
合計点は28点です。

※BBSBerg Balance scale:
バーグバランススケールと読みます。
合計点は56点です。


歩行速度を予測するには、この2つの
バランステストのどちらが有用で
あるのかを比較しています。

 

 

結果は・・・
ゆっくり歩く方と速く歩く方を
分けるバランスの得点は、
mini-BESTest 18.5点
BBS       47.5点
ということがわかりました。

 

 

歩行速度だけをみるとmini-BESTestと
方が(BBSと比べて)予測するのには有用
という結果でした。


だからといってmini-BESTestだけ
検査を行えばと良いというワケでは
ありません!!(←ここ重要です。)


バランス能力と一口にいっても
筋力、感覚など様々な要素で
成り立っています。


バランスの検査・評価は数多く
開発されていますが、
それぞれに
得手・不得手があります!


そのため目標やお悩みごとに合わせた
検査を行うことが大切です!
(バランス検査だけではなくリハビリ検査
全般に言えることです。)

 

 

この論文では歩行速度の速い方と
ゆっくりな方を0.8m/secで分けています。
個人的には、けっこう早い速度だなと
思いました。


自宅周辺に限らず外出するための
指標の1つとしては有用なのかも
知れません。

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行速度とバランステストとの関係性を
解説しました。


本コラムが皆さまの何かの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(更新日:2022年8月4日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献
1)Madhavan S, Bishnoi A.
Comparison of the Mini-Balance Evaluations
Systems Test with the Berg Balance Scale
in relationship to walking speed and motorrecovery
post stroke.
Top Stroke Rehabil. 2017 Dec;24(8):579-584.
doi: 10.1080/10749357.2017.1366097.
Epub 2017 Aug 21.
PMID: 28826325; PMCID: PMC5839481.

 

 

 

 

2022-08-02 10:36:00

脳卒中患者さんの固有感覚障害とバランス障害の関係

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムは脳卒中の患者さんの
足関節の固有感覚障害とバランス障害
との
関係を
解説したいと思います。


今回はChoらの論文を
ご紹介したいと思います!

 

 

この研究では6ヶ月以上前に脳卒中を
患った方で、歩行が
見守りもしくは
自立の患者さんが参加しました。


※バランス能力の検査
・Berg Balance Scale (BBS)
・Timed Up and Go(TUG)
この2つが行われました。


論文ではBBS得点が46点以下、
TUGが13.5秒以上の場合を
バランス障害と定義しています。


※固有感覚とは?
腕や脚がどのぐらい曲がっているのか
(伸びているのか)、筋肉の長さなどの
感覚のことです。

 

 

結果は・・・
バランス障害は足首の固有感覚障害
関係
することがわかりました。


さらにバランス障害があるグループは
(バランス障害がないグループに比べて)
足関節の固有感覚障害を3.49倍もつことも
明らかにされています。

 

 

 

足関節の固有感覚障害があることで
バランスが悪くなってしまうという
結果をみて不安に思われる方も
いらっしゃるかも知れません。


バランス能力は固有感覚のみで
成り立つものではありません。


例えば、
Horakらの報告によると、
①生体力学的制約
②安定限界/垂直性
③予測姿勢調整
④姿勢反応
⑤感覚的方向性
⑥歩行の安定性

この6つを基盤としてバランスが
成り立つと説明しています。



バランス能力を分析し、課題にあった
リハビリを行うことが大切です!!

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
足関節の固有感覚障害とバランス障害との
関係を解説しました。


本コラムが皆さまの何かの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年8月2日)
(更新日:2023年1月16日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献

1)Cho JE, Kim H.
Ankle Proprioception DeficitIs the Strongest
Factor Predicting Balance Impairment in
Patients With Chronic Stroke.
Arch Rehabil Res Clin Transl. 2021 Nov 2;3(4):
100165. doi: 10.1016/j.arrct.2021.100165.
PMID: 34977547; PMCID: PMC8683870.

2)Horak FB, Wrisley DM, Frank J.
The Balance Evaluation Systems Test (BESTest) to
differentiate balance deficits.
Phys Ther. 2009 May;89(5):484-98.
doi: 10.2522/ptj.20080071.
Epub 2009 Mar 27.
PMID: 19329772; PMCID: PMC2676433.

 

 

 

 

 

 

2022-07-30 15:19:00

脳卒中患者さんの歩行とバランス能力との関係性とは?

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!

 

 

バランス能力の検査は数多くありますが
その中でもBESTest
(Balance EvaluationSystems Test:
ベステスト
というものがあります。

ベステストは・・・
①生体力学的制約
(筋力など)

②安定性限界
(どこまで手を伸ばせるかなど)

③予測的姿勢制御
(起立などの動作)

④反応的姿勢制御
(バランスを崩した時に回復できるかなど)

⑤感覚機能
(目を閉じて立てるかなど)

⑥歩行安定性
(平地での歩行など)

この6つに分けてバランス能力を
詳しく検査するものです。

 

 

そのバランス能力と歩行はどのような関係が
あるのでしょうか。



Miyataらによれば・・・
BESTestの得点が高いほど
(バランスが良いほど)歩行可能な
範囲が広いことがわかっています。


そして基準値は・・・
BESTestの6つの項目それぞれで
算出されています。


自宅のみ歩行可能な方と
自宅周辺のみ歩行可能な方を分ける
BESTestの基準値は36.1 ~ 78.6%の
範囲にあることがわかりました。


安定性限界と感覚機能この2つの項目
以外は(満点の)半分以下の値でした。



※ちなみに自宅周辺のみ歩行可能な
方と制限なく外出(歩行)可能な
方との基準点も算出されています。

 

 

この研究結果は、お体の状態によっても
違いますが、屋外を歩くための1つの目安に
なるのではないでしょうか?


今回出てきたBESTestはバランス能力の
全体をみる良い検査なのですが、
とても時間がかかるのが欠点です。


そのため
Mini-BESTestやBrief-BESTestと
呼ばれる縮小版も開発されています。


ここで大切なのは一口にバランスと言っても
構成している要素にしたがってバランスを
検査・評価することであると考えています。

 

 

本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行とバランス能力との関係性を
解説しました。


本コラムが皆さまの何かの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年7月30日)
(更新日:2023年5月20日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献
1)Miyata K, Hasegawa S, Iwamoto H, Otani T,
Kaizu Y, Shinohara T, Usuda S.
Which Balance Evaluation Systems Test sections
best distinguish levels of post-stroke
functionalwalking status? J Rehabil Med. 2021
Sep 24;53(9):jrm00230.
doi: 10.2340/16501977-2870.
PMID: 34486068; PMCID: PMC8638744.

 

 

 

 

2025.05.11 Sunday