リハビリコラム
脳卒中の患者さんの肩の痛み。その危険因子とは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
肩の痛みの危険因子についてを
解説したいと思います。
今回は肩の痛みの危険因子を研究した
Kimらの論文をご紹介したいと思います!
この研究では・・・
脳卒中の患者さんを対象として
腕の運動、可動域(動く範囲)、
痙縮(けいしゅく)の程度など肩関節に
関わる検査が、発症後1ヶ月、
3ヶ月、6ヶ月と経過を追って
実施されました。
その結果・・・
肩関節の痛みの発生率は、
1ヶ月時点で31%
6ヶ月時点では54%でした。
そして・・・
発症6ヶ月時点で
肩関節の痛みがある方は、
(痛みを生じていない方に比べて)
①年齢が70歳未満
②腕のマヒが重度である
②棘上筋の炎症・断裂がある
この3つが当てはまると
いうことがわかりました。
※棘上筋とは?
肩関節の深いところにあって
主に肩を外に広げるために働く
小さな筋肉です。
ちなみに発症後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の
時期によって肩関節の痛みに関係する
要因に違いがあることもわかっています。
少なくともこの期間は肩関節を
痛めないようにするために注意を払い、
リハビリを行うことが必要なのかも
知れません。
【私が気になる点】
※少しややこしい表現となることを
お含みおきください。
①肩関節痛への影響の程度をみるために
「オッズ比」を算出しています。
オッズ比の場合、95%信頼区間が1を
またぐか否かが大切な判断基準になります。
(またぐ場合は影響があると言えない)
棘上筋の炎症・断裂をみると
オッズ比の信頼区間が1に近いところまで
幅広いのが気になります。
つまり影響があると言い切れない
場合もあるということです。
②この研究では6ヶ月まで経過を
追っていましたが、それ以降は
どのような傾向を辿ったのか
気になるところです。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
肩の痛みの危険因子を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年8月5日)
(更新日:2023年6月18日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Kim YH, Jung SJ, Yang EJ, Paik NJ. Clinical and
sonographic risk factors for hemiplegic
shoulder pain: A longitudinal observational study.
J Rehabil Med. 2014 Jan;46(1):81-7.
doi: 10.2340/16501977-1238.
PMID: 24129640.