リハビリコラム
脳卒中患者さんに対する前庭リハビリテーション~Gaze Stability Exercise~
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!
今回は脳卒中患者さんに対する前庭
リハビリテーションについてを
解説したいと思います。
※前庭リハビリテーションとは?
前庭とは平衡感覚を保つために
必要な器官です。
腕・脚・首・目の動きと関係があり、
姿勢を保つために働きます。
これらの調整がうまくいかなくなると
めまい、ふらつきなどが見られるように
なります。
前庭機能に対するリハビリテーションには
①適応
②慣れ
③代償
この中の「適応」に
Gaze Stability Exerciseという
方法があります。
※Gaze Stability Exerciseとは?
目の前にある文字などを見続けながら、
目だけを動かしたり、頭を動かしたり、
手を動かしたりする方法です。
Zhaoらは脳卒中患者さんに対して
Gaze Stability Exerciseを行い
その効果を検証しています。
この研究には・・・
40名の脳卒中患者さんが
参加されています。
そして、
①Gaze Stability Exerciseを
行うグループ
②Gaze Stability Exerciseを
行わないグループ
この2つのグループに分けられました。
ちなみに両グループともに、通常行われる
リハビリは実施しています。
その結果・・・
Gaze Stability Exerciseを
行ったグループは、
(行わなかったグループに比べて)
バランス能力、歩行能力、
マヒ側の立脚時間、立脚時間の
非対称性が改善することが
わかりました。
※立脚時間とは?
歩行には大きく
「立脚期」「遊脚期」
この2つに分けることができます。
立脚期は脚で支えるときのことです。
立脚時間は脚で支えている時間のことです。
立脚時間の非対称性とは?
左右の立脚時間の差です。
その差が大きくなると非対称性が
増すことになります。
【注意点】
では明日から試してみようと思った方、
お待ちください!!
他のリハビリと同じことですが、
検査や評価を行った後に行うことを
おススメします。
「めまい」には様々な原因がありますので、
前庭リハビリテーションを行うことの
リスクも検討する必要があります。
例えば、首にある動脈の血流が少なくなる
ことが原因で”めまい”などの症状が
みられることもあります。
興味をもたれた方は、現在リハビリを
行っている方でしたら専任スタッフの方に
ご相談いただくのをお勧めします!
本コラムでは、脳卒中患者さんに対する
前庭リハビリテーションを解説しました!
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月27日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Zhao R, Lu J, Xiao Y, Liu X, Wang Y, Xu G.
Effects of Gaze Stabilization Exercises on Gait,
Plantar Pressure, and Balance Function
in Post-Stroke Patients:
A Randomized Controlled Trial. Brain Sci.
2022 Dec 9;12(12):1694. doi: 10.3390/
brainsci12121694. PMID: 36552154;
PMCID: PMC9775540.
パーキンソン病患者さんの二重課題中の姿勢安定性
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムではパーキンソン病患者さんの
二重課題での姿勢安定性を解説したいと
思います。
今回はMorenillaらの報告を
紹介したいと思います!
この研究では、
パーキンソン病の患者さんと
パーキンソン病ではない方が
参加しています。
さらに・・・
Ⓐシングルタスク①
(立つ+目を開ける)
Ⓑシングルタスク②
(立つ+目を閉じる)
Ⓒデュアルタスク①
(立つ+目を開ける+認知課題)
Ⓓデュアルタスク①
(立つ+目を閉じる+認知課題)
Ⓐ〜Ⓓのグループに分けられ、
姿勢の安定性が調査されました。
※デュアルタスク(二重課題)とは?
運動課題と認知課題を一緒に行うことです。
例えば、計算を行いながら歩くのも、
デュアルタスク(二重課題)です。
※認知課題とは?
イヤホンで話しを聞き、あらかじめ
決めておいた単語がいくつ出てくるのか
覚えておき答える課題です。
その結果・・・
パーキンソン病の患者さんは
(パーキンソン病ではない方に比べて)
姿勢の動揺が大きいことがわかりました。
さらに、
パーキンソン病ではない方は、
(立つ+目を閉じる+認知課題)で
認知課題の正答率が下がったのに対し、
パーキンソン病の患者さんは、
(立つ+目を開ける+認知課題)で
認知課題の正答率が下がることが
わかりました。
つまり、パーキンソン病の患者さんは
課題を行っているときは、姿勢の安定を
保つことを優先にしていると言えます。
課題を行っているときと行わないときの
姿勢の変化を観察したり、その動揺を
確認することも必要なのかも知れません。
リハビリの戦略自体も変えなくては
ならないのかなと感じています。
本コラムではパーキンソン病患者さんの
二重課題中での姿勢安定性を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月24日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1) Morenilla L, Márquez G, Sánchez JA, Bello O,
López-Alonso V, Fernández-Lago H,
Fernández-Del-Olmo MÁ.
Postural Stability and Cognitive Performanceof
Subjects With Parkinson's Disease During
a Dual-Task in an Upright Stance.
Front Psychol. 2020 Jul 29;11:1256.
doi: 10.3389/fpsyg.2020.01256.
PMID: 32903649; PMCID: PMC7438725.
人工膝関節置換術後の患者さんの歩行能力と膝関節伸展筋力
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!
今回は人工膝関節術後の患者さんの
歩行能力と膝伸展筋力を解説したいと
思います。
※膝伸展とは?
ひざをピ―ンと伸ばすことです。
今回はIwataらの論文を紹介したいと
思います!
この研究には186名の人口膝関節置換術を
受けられた患者さんが参加しました。
そして、
・膝関節の伸展筋力
・膝関節の伸展速度
・歩行速度
・Timed up go Test(TUG)
※TUGとは?
歩行能力を検査する方法の1つです。
①椅子から立ち上がる
②3m離れたコーンを回る
③椅子に座る
この①~③にかかった時間を計測します。
その結果・・・
【歩行速度】
①手術した側の膝関節伸展速度
②手術していない膝関節の伸展筋力
③膝の痛み
以上の3つが歩行速度と関係があることが
わかっています。
【TUG】
手術した側の膝関節伸展速度が
TUGの結果と関係があることが
わかっています。
【まとめ】
つまり、歩行速度もTUGの結果にも
膝関節の伸展速度が関係があるという
ことです。
膝関節伸展速度を上げるための
トレーニングの方法については
吟味する必要がありますが、
筋力だけでなく、速度にも注目が
必要だなと感じました。
本コラムでは、人工膝関節置換術後の
患者さんの歩行能力と膝関節伸展を
解説しました!
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月16日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Iwata A, Sano Y, Wanaka H, Kobayashi S,
Okamoto K, Yamahara J, Inaba M, Konishi Y,
Inoue J, Kanayama A, Yamamoto S, Iwata H.
Maximum knee extension velocity without
external load is a stronger determinant of
gait function than quadriceps strength
in the early postoperative period following
total knee arthroplasty. PLoS One.
2022 Nov 22;17(11):e0276219.
doi: 10.1371/journal.pone.0276219.
PMID: 36413535; PMCID: PMC9681062.
脳卒中患者さんのマヒした脚に対するCI療法
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!
今回は脳卒中患者さんのマヒした脚に
対するCI療法を解説したいと思います。
今回はZhouらの論文を紹介したいと
思います!
※CI療法とは?
英語では、
constraint-induced movement therapy
と言われているもので、脳卒中によって
マヒした手に対するリハビリの1つです。
日常生活で使用することをマヒした手を
目標として、課題(練習)を行ったり、
その練習が日常生活に活かせるように
工夫された方法です。
マヒした手に対するリハビリとして
発展したCI療法ですが、
脚に対して行われる場合もあります。
Zhouらの論文はマヒした脚に対する
CI療法の効果を調査した研究です。
その結果・・・
マヒした脚に対するCI療法は、
(従来の理学療法と比べて)
①マヒした脚の運動機能
②バランス能力
③歩行速度
④歩行能力
⑤日常生活動作能力
①~⑤の改善が得られたと
報告しています。
【私が気になるところ】
①CI療法の方法が統一されていないこと
インソールを使用したり、
マヒしていない側の脚に添え木を使用したりと
方法が様々な点が気になりました。
②CI療法の介入時期
どのリハビリでも同じなのですが、
発症して間もないころに効果があるのか、
発症からしばらく経過が経っても効果が
あるのか気になるところです。
私としては、マヒされた脚に対して
積極的に介入することに意味が
あるのかなと思いました。
ということは・・・
通常のリハビリとの違いが
気になり始めました。
下肢のCI療法のプロトコル(手順書)が
あるようなので読んでみたいと思います!
本コラムでは、脳卒中患者さんの
マヒした脚に対するCI療法を
解説しました!
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月9日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Zhou M, Tu Y, Cui J, Gao P, Yi T, Wang J,
Hao Q, Li H, Zhu T.
Effect of constraint-induced movement therapy
onlower extremity motor dysfunction in
post-stroke patients: A systematic review and
meta-analysis. Front Neurol. 2022 Nov 21;13
:1028206. doi: 10.3389/fneur.2022.1028206.
PMID: 36479056; PMCID: PMC9720264.
パーキンソン病患者さんのバランストレーニング〜リズミカルな 聴覚刺激の併用〜
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムではパーキンソン病患者さんの
バランストレーニング〜リズミカルな
聴覚刺激との併用を解説したいと
思います。
今回はTamineらの報告を
紹介したいと思います!
この研究では、
パーキンソン病の患者さんが
154名が参加しました。
①リズミカルな聴覚刺激(RAS)に
合わせたバランストレーニング
②バランストレーニング
③一般的な教育プログラム
①〜③のグループに分けられ、
それぞれの効果が調査されました。
※リズミカルな聴覚刺激(RAS)とは?
メトロームや音楽に合わせて
歩行練習などを行う方法です。
Rhythmic Auditory Stimulation
(RAS)と呼ばれます。
この研究ではメトロームのリズムを
使用しています。
※一般的な教育プログラムとは?
この研究ではパーキンソン病、
転倒予防に関わる知識などの
提供が行われています。
その結果・・・
リズミカルな聴覚刺激を併用した
バランストレーニングを行ったグループは、
バランス能力向上、転倒恐怖感の軽減、
歩行能力、日常生活動作、運動症状が
改善されました。
※日常生活動作と運動症状は、
Unified Parkinson's disease Rating Scale
(UPDRS)と言われるパーキンソン病
患者さんの症状を詳しく見るために
開発された検査が用いられています。
ちなみに・・・
バランストレーニングのみを行った
グループでもバランス能力改善が
得られたと報告しています。
実際にリハビリで行うことを想定すると、
聴覚刺激の種類、テンポなどで
効果に差があるのかが気になるところです。
バランストレーニング自体の効果も
あるかと思いますので、リズミカルな
聴覚刺激を追加し行うのかについては、
リハビリの経過をきちんと追う必要が
あるなと感じました。
本コラムではパーキンソン病患者さんの
バランストレーニング〜リズミカルな
聴覚刺激の併用〜を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月7日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1) Capato TTC, de Vries NM, IntHout J,
Barbosa ER, Nonnekes J, Bloem BR.
Multimodal Balance Training Supported by
Rhythmical Auditory Stimuli in Parkinson's Disease:
A Randomized Clinical Trial. J Parkinsons Dis.
2020;10(1):333-346. doi: 10.3233/JPD-191752.
PMID: 31884492; PMCID: PMC7029328.