リハビリコラム
脳卒中患者さんの歩行とバランス能力との関係性とは?
こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行とバランス能力との関係性を
解説したいと思います。
今回は歩行とバランス能力との関係性を
研究したMiyataらの論文をご紹介したいと
思います。
脳卒中を患った方で、
介助者の見守りもしくはお一人で
歩ける方を対象としています。
バランス能力の検査としてBESTest
(Balance EvaluationSystems Test:
ベステスト)を採用しています。
ベステストは・・・
①生体力学的制約
(筋力など)
②安定性限界
(どこまで手を伸ばせるかなど)
③予測的姿勢制御
(起立などの動作)
④反応的姿勢制御
(バランスを崩した時に回復できるかなど)
⑤感覚機能
(目を閉じて立てるかなど)
⑥歩行安定性
(平地での歩行など)
この6つに分けてバランス能力を
検査するものです。
Fulkらによると歩行速度によって
歩行可能な範囲(自宅のみ・自宅周辺など)
を分けることができるとされています。
この論文ではその分類に従い、
歩行可能な範囲とバランス能力は
どのような関係があるのか、
またその基準値についても
検討されています。
その結果の一部を紹介したいと思います。
BESTestの得点が高いほど
(バランスが良いほど)歩行可能な
範囲も広がることがわかりました。
そして基準値については・・・
BESTestの6つの項目それぞれで
算出されています。
自宅のみ歩行可能な方と
自宅周辺のみ歩行可能な方を分ける
BESTestの基準値は36.1 ~ 78.6%の
範囲にあることがわかりました。
安定性限界と感覚機能この2つの項目
以外は(満点の)半分以下の値でした。
※ちなみに自宅周辺のみ歩行可能な
方と制限なく外出(歩行)可能な
方との基準点も算出されています。
この研究の結果は、お体の状態によっても
違いますが、屋外を歩くための1つの目安に
なるのではないでしょうか?
今回出てきたBESTestはバランス能力の
全体をみる良い検査なのですが、
とても時間がかかるのが欠点です。
(30分以上)
そのためMini-BESTestやBrief-BESTestと
呼ばれる縮小版も開発されています。
ここで大切なのは一口にバランスと言っても
構成している要素にしたがってバランスを
検査・評価することであると考えています。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行とバランス能力との関係性を
解説しました。
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年7月30日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Miyata K, Hasegawa S, Iwamoto H, Otani T,
Kaizu Y, Shinohara T, Usuda S.
Which Balance Evaluation Systems Test sections
best distinguish levels of post-stroke
functionalwalking status? J Rehabil Med. 2021
Sep 24;53(9):jrm00230.
doi: 10.2340/16501977-2870.
PMID: 34486068; PMCID: PMC8638744.
2)Fulk GD, He Y, Boyne P, Dunning K.
Predicting Home and Community Walking Activity
Poststroke. Stroke. 2017 Feb;48(2):406-411.
doi: 10.1161/STROKEAHA.116.015309.
Epub 2017 Jan 5. PMID: 28057807.