リハビリコラム
パーキンソン病の患者さんに対するリハビリの効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)代表の
市川です。
本コラムではパーキンソン病の
患者さんに対するリハビリの効果を
解説したいと思います。
パーキンソン病の患者さんには
手の震え、筋肉のこわばり、
バランスを崩しやすくなるなどの
運動面の症状だけではなく、睡眠障害や
自律神経障害がみられることがあります。
リハビリは理学療法、作業療法、
言語聴覚療法の3つがあります。
その中でもパーキンソン病の患者さんの
理学療法の効果を調査したOkadaらの
論文をご紹介したいと思います。
この論文では・・・
軽度・中等度の症状がある
パーキンソン病の患者さんを
対象としました。
6か月以上の理学療法を行うと、
運動症状、日常生活動作、
抗パーキンソン病薬の服薬量への
影響を検証しています。
その結果・・・
6ヶ月以上の長期にわたる理学療法を
行うとオフ状態での運動症状を改善でき、
さらに抗パーキンソン病薬の内服量を
少なくできることがわかりました。
※オフ状態(現象)とは?
パーキンソン病の症状が内服薬によって
抑えられていない時です。
ちなみに症状を内服薬で
抑えられている時をオン状態(現象)と
いいます。
リハビリを行うときに大切なことは
身体の状態を詳しく検査することです。
例えば・・・
関節の動き、筋力、バランス能力などの
検査を行ったりします。
パーキンソン病の患者さんの場合、
「MDS-Unified Parkinson's
Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)」
というパーキンソン病の症状を詳しく
調べることができる検査を行うことが
あります。
目標・リハビリの検査結果を踏まえて
最適なリハビリメニューを
行うことが大切だと考えます。
お薬が効いている時間を確認し
それに合わせてリハビリを
行うことも必要になります。
今回はパーキンソン病の患者さんに対する
理学療法の効果を解説しました。
新しい知見が増えるのに合わせて
リハビリに必要な知識もどんどん
増えています。
私は新しい知見にアンテナを張り、
情報を吟味した上で、患者さんや
利用者さんに還元できたらと
常々感じています。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てればとても嬉しく思います。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月14日)
(更新日:2023年1月4日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Okada Y, Ohtsuka H, Kamata N, et al.
Effectiveness of Long-Term Physiotherapy
in Parkinson's Disease: A Systematic Review
and Meta-Analysis. J Parkinsons Dis.
2021;11(4):1619-1630. doi:10.3233/
JPD-212782
脳卒中患者さんの転倒予防に有効なリハビリとは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の
市川です。
本コラムは脳卒中患者さんの
転倒予防に有効なリハビリについて
解説していきたいと思います。
私が病院勤めだった頃、
患者さんに一人で歩いても良いと
許可を出したときには転んでないか
ドキドキしたものです。
以前、高齢者の転倒は運動で
予防できるのかを解説しました。
まだお読みになられていない方は
こちらをご覧ください!
>>転倒は運動で予防できる!?
脳卒中の患者さんの転倒予防に
有効なリハビリとは?
この疑問に答えた Denissenらの
論文を紹介したいと思います!
この研究では・・・
運動、退院前の自宅訪問、眼鏡(レンズ)の
変更、歩行器の使用、経頭蓋直流電気刺激
などが転倒予防の効果があるのか
調査されました。
※経頭蓋直流電気刺激とは?
頭蓋骨の上から微弱な電気を流す方法です。
その結果は・・・
運動によって転倒率が減少し、
経頭蓋直流電気刺激によって転倒者数を
減らせることがわかりました。
※転倒率とは?
一年間でAさんが転倒した数
※転倒者数とは?
Aさん、Bさん、Cさん・・・
のように人数の合計を表します。
【私が気になるところ】
1点目
運動によって転倒率は減少しましたが、
発症から6ヶ月以上経過した慢性期の
患者さんの転倒率が減少しなかったのです。
2点目
運動、経頭蓋直流電気刺激のどちらも
エビデンス(根拠)としての確実性が
低いことです。
つまり現状では効果があると断言ができない
ということです。
最近、「経頭蓋直流刺激」を簡易刺激装置が
一般でも販売されるようになりました。
しかし安全性の面から日本神経生理学会は
ホームページで注意喚起を行っています。
使用にあたっては担当の医師などに
相談いただくのが良いのかなと思います!
>>経頭蓋直流電気刺激について
>>日本神経生理学会の注意喚起
転倒の原因は様々です。
脳卒中患者さんの転倒予防の方法は
現時点では確立していません。
身体機能だけの一側面ではなく、
環境面の整備など様々な側面からの
アプローチで転倒予防の方法を
考えなければならないのかなと
感じています。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月14日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Denissen S, Staring W, Kunkel D, et al.
Interventions for Preventing Falls in People
After Stroke.Stroke. 03 2020;51(3):e47-e48.
doi:10.1161/STROKEAHA.119.028157
2)理化学研究所ホームページ
https://www.riken.jp/press/2016/20160322_1/
(2022年3月17日閲覧)
3)日本神経生理学会ホームページ
http://jscn.umin.ac.jp/info/2019-03-28.html
(2022年3月17日閲覧)
今日はホワイトデー。オープンして1ヶ月!
本日はホワイトデーですね。
私の施設はバレンタインデーに
オープンしましたので、
ちょうど1ヶ月になりました。
ウェブページで公開しているコラムも
37個になりました。
リハビリに役立つコラムを、
皆様に役立つ内容ということを念頭に、
これからも書いていきたいと思います。
これからもよろしくお願い致します!
素朴な疑問!転倒を運動で予防できるのか?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT(アルコネクト)の代表
市川です。
本日は転倒を運動で予防できるのかを
解説したいと思います!
私が病院に勤めていた頃・・・
「転ぶの怖くて動くのがおっくう」
「また転ばないか心配」などの
不安を患者さんから伺うことが
ありました。
不安や心配が少なくなり、
転倒を事前に防げたら良いのにな
と日頃から思っていました。
転倒予防のために運動を勧められることが
ありますが、本当に効果があるのでしょうか?
その疑問に答えたSherringtonらの
論文を紹介したいと思います!
この論文では・・・
60歳以上の方を対象として、
筋力トレーニング、有酸素運動、
バランス練習などの運動によって
転倒を予防できるのかを調査されました。
その結果・・・
運動を行うことで
(運動を行わない場合に比べ)
転倒率や転倒者の人数を減らせる
ことがわかりました。
しかし・・
75歳以上の方では、
運動を行う場合と運動を行わない場合を
比較したときに転倒率が変わらないという
結果でした。
※転倒率とは?
〇〇さんが一年間で転倒した数です。
※転倒者の人数とは?
〇〇さん、△△さん、▢▢さん・・・・
のように転んだ方を合計した人数です。
運動の方法としては・・・
歩行練習、バランス練習、太極拳が
効果的であったと報告しています。
太極拳がばっちりできる方は
そもそも転倒しにくい気も
しますが・・・。
転倒の要因は様々です。
要因によっては運動のみでは
解決が難しいこともあるかも
知れません。
住み慣れた環境を変えるのはとても
勇気がいることですが、手すりの設置や
段差解消など生活環境の変更も
必要な場合もあります。
今回の論文では、脳卒中や
骨折した患者さんは参加していません。
疾患によって転倒の要因も違い、
対処法も変える必要もあるかも知れません。
本日は転倒を運動で
予防できるのかを解説しました。
本コラムが皆さまの何かのお役に
立てましたら嬉しいです。
最後までお読み下さり、
ありがとうございました。
(執筆日:2022年5月31日)
(更新日:2023年2月17日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Sherrington C, Fairhall NJ,Wallbank GK, et al.
Exercise for preventing falls in olderpeople
living in the community.
Cochrane Database Syst Rev. Jan 31
2019;1:CD012424.doi:10.1002/14651858.
CD012424.pub2
変形性股関節症の患者さんが行う運動の効果とは?
こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本日は変形性股関節の患者さんが
行う運動の効果を解説したいと
思います。
変形性股関節症は股関節に痛みが生じ、
進行すると骨切り術や人工股関節置換術
などの手術をしなくてはならない場合も
あります。
私が病院に勤めていた頃、変形性股関節症が
進行し手術された方を担当していました。
診断されてからの経過年数が長い方が多く、
当時はその経過を踏まえつつ、
リハビリの内容を考えていました。
では変形性股関節の患者さんが行う
運動にはどのような効果が
あるのでしょうか?
この疑問に答えたFransenらの
論文を紹介したいと思います。
この研究での運動とは関節可動域運動、
筋力トレーニング、有酸素運動などの
ことです。
・痛みの強さ
・日常生活の困難さ
・生活の質(生活の満足度)
などの運動前後での変化をみることで
運動の効果を調査しています。
結果は・・・
運動を行うと痛みや日常生活の
困難さは、運動直後から改善がみられ、
その効果は3ヶ月~6ヶ月は持続する
ということがわかりました。
実際に運動を行う時には、
お体の状態、目標やご希望を踏まえ、
どのような運動をどのぐらいを
行うのかを吟味することが大切です!
変形性股関節症は進行の度合いが
関係しますので、運動のみでは
なかなか効果が得られないことも
あるかも知れません。
クリニックや病院などに通院されて
いる方でしたら、担当スタッフに
相談するのも良いかも知れません。
本コラムでは変形性股関節症の患者さんが
行う運動の効果を解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年10月25日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1) Fransen M, McConnell S,
Hernandez-Molina G,Reichenbach S.
Exercise for osteoarthritis of the hip.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 22;(4):
CD007912. doi: 10.1002/14651858.
CD007912.pub2.
PMID: 24756895.