リハビリコラム
知りたい!脳卒中患者さんの歩行回復の予後とは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回は脳卒中の患者さんの歩行回復の
予後を解説したいと思います!
歩行回復の予後に影響がある
脳の場所はいったいどこなのか?
その疑問に答えたLeeらの
論文を紹介したいと思います!
※予後とは?
今後の見通しのことです。
この論文では、
MRIを使い、脳卒中の患者さんの
歩行回復に影響がある脳の場所を
調査しています。
※MRIとは?
主に病変を見つけるために
使われる検査のことです。
結果は・・・
放線冠、内包、被殻、尾状核などが
歩行回復に関係がある
ということがわかりました。
また発症後6ヶ月を通じて徐々に
歩行自立度が向上していくことも
明らかにされています。
つまり・・・
歩行を自立された方の割合が
6ヶ月を経て徐々に増えた
ということです。
ちなみに6ヶ月間はリハビリを
行っています。
リハビリ専門の病棟である
回復期リハビリテーション病棟。
疾患によって入院日数の
上限が決められています。
例えば脳卒中の方であれば、
150~180日間は入院できます。
しかし・・・
入院日数は年々減少傾向にあり、
全国平均で2ヶ月程度と言われています。
私が所属していた回復期リハビリテーション
病棟も平均入院日数も全国平均に
近いものでした。
つまり・・・
Leeら研究結果と平均入院日数の
関係性をみると、退院した患者さんの中に
まだまだ改善の見込みのある方が
いらっしゃる可能性が考えられるのです。
歩行回復に影響がある
脳の場所がダメージを受けたから
必ずしも歩行が困難になると
いうわけでもありません。
あくまで研究結果の一つであり、
脳卒中の症状にも個人差が
あるように歩行回復の予後に
違いがあります。
そこで大切なのは、
詳しく身体の状態を検査することです。
例えば・・・
関節の動き、筋力、バランス能力などです。
もちろんリハビリ専門職だけではなく
医師や看護師、介護士などの
様々な専門職の見解を踏まえて
検討することが大事です。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行の予後を解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月20日)
(更新日:2023年2月12日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Lee KB, Kim JS, Hong BY, at al.
Brain lesions affecting gait recovery in stroke
patients. Brain Behav. 2017 Oct 25;7(11):e00868.
doi: 10.1002/brb3.868. PMID: 29201557;
PMCID: PMC5698874.
知っておきたい!脳卒中の患者さんが使用する短下肢装具の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回は脳卒中の患者さんが使用する
短下肢装具の効果を解説したいと思います!
※短下肢装具とは?
足に装着する装具のことです。
「装具を作製したけれど、
どんな効果があるのだろう?」と
疑問に思ったことはありませんか?
この疑問に答えたSaundersらの
論文を紹介したいと思います!
この論文では・・・
短下肢装具を装着することによって
歩行速度、歩幅、バランスを含む
歩行能力、歩行時の足関節、膝関節、
股関節の角度にどのような影響が
あるのかを調査しています。
その結果・・・
短下肢装具を使用することで
歩行速度、バランスを含む歩行能力が
向上し、歩幅も拡大、歩行時の足首や
膝関節の角度が大きくなることが
わかりました。
つまり・・・
足の装具を使用することで、
歩行能力が向上することがわかりました。
短下肢装具には、
プラスチック製、金属製、
カーボン製などの材質があります。
継手(足首の関節に相当する部分)が
あるもの、ないものもあり、ベルトの
本数、装具の長さ、形も様々です。
中にはお風呂専用の装具もあります。
歩行能力向上のためだけでなく、
拘縮の予防、歩行時のつま先の
ひっかかりを防止するためなどを
目的として作製されることもあります。
痙縮、感覚障害、つま先を上に挙げる力
(背屈といいます)、足首の関節の柔らかさ、
むくみの状態などや生活状況、想定される
使用環境を踏まえて作製することが
大切だなと感じています。
※拘縮とは?
関節や筋肉が固くなってしまうことです。
※痙縮とは?
手や足が突っ張ってしまったり、
筋肉がこわばってしまう症状です。
私が病院に勤めていた頃、
退院した患者さんから装具の相談を
受けることがとても多くありました。
そのため、退院後の装具の悩みを
解決できるような体制を医師や
義肢装具士の方と相談し
立ち上げた経験もあります。
リハビリ専門職として、
装具を作製したら終わりではなく、
他の職種と連携しその後のフォローも
必要と考えています。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
短下肢装具の効果を解説しました。
皆さまの少しでもお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月20日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Choo YJ, Chang MC. Effectiveness of an
ankle-foot orthosis on walking in patients
with stroke: a systematic review and
meta-analysis. Sci Rep. 2021 Aug 5;11(1):
15879. doi: 10.1038/s41598-021-95449-x.
PMID: 34354172; PMCID: PMC8342539.
脳卒中の患者さんが行う後ろ歩きの効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
リハビリで行う歩行練習では、
前方・後方・横など様々な方向へ歩いたり、
その場で一回転したり、段差をまたいだりと
ご自宅の環境に合わせた練習を行います。
本コラムでは脳卒中の患者さんが行う
後ろ歩きの効果についてを
解説したいと思います!
脳卒中の患者さんが後ろ歩きを
行うとどのような効果があるのか?
この疑問に答えたWenらの論文を
紹介したいと思います!
この研究では・・・
後ろ歩きを行うと、歩行速度、
バランス能力、マヒ側の歩幅などに
どのような影響があるのかを
調査しました。
その結果・・・
後ろ歩きを行うと歩行速度や
バランス能力が向上し、マヒ側の歩幅も
大きくなるということがわかりました。
「後ろ歩きを練習に取り入れよう!」と
思った方、少しお待ちください!
この研究では・・・
後ろ歩き以外にも通常の歩行練習や
バランストレーニングなどの練習を
行ったグループが含まれています。
純粋に後ろ歩きの練習の効果と
言い切れないところに注意が必要です!
後ろ歩きを練習として取り入れる場合、
転倒する危険が考えられます。
リハビリを受けている方でしたら
担当スタッフにご相談いただくのも
良いかも知れません!
今回は脳卒中の患者さんが行う
後ろ歩きの効果を解説しました。
本コラムが皆さまの少しでもお役に
立てましたらとても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月16日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Wen H, Wang M. Backward Walking Training
ImpactsPositive Effect on Improving Walking
Capacityafter Stroke: A Meta-Analysis.
Int J Environ ResPublic Health. 2022 Mar 12
;19(6):3370.
doi: 10.3390/ijerph19063370.
PMID: 35329056;
PMCID: PMC8956083.
知っておきたい!脳卒中の患者さんのトレーニング効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本日は脳卒中の患者さんの
トレーニング効果を解説します!
当施設の近くには女性専用の
スポーツジムがあります。
多くの女性が開店前から
お店の前に並んでいます。
昨今では、健康関心が高まっているためか
普段からランニングをしたり、
スポーツジムで体を鍛えたりする方も
前より多いのかなと思います。
では脳卒中の患者さんが筋力トレーニングや
有酸素運動などのトレーニングを
どのような効果があるのでしょうか?
この疑問に答えたSaundersらの
論文を紹介したいと思います!
※この論文のトレーニングとは?
筋力トレーニングや有酸素運動を
組み合わせたトレーニングです。
トレーニングの効果を調査するために
死亡数・日常生活の自立度・歩行能力
などがどのように変化するのかを
検討しています。
※日常生活の自立度とは?
日常生活において患者さん自身で
どのぐらい行えるのかを表すものです。
この論文はかなりボリュームが多いので
要点を絞ってお伝えしたいと思います。
結果は・・・
①有酸素運動は歩行能力や
バランス能力などを改善させる
可能性がある。
②筋力増強運動はバランス能力を
改善させる可能性がある。
③有酸素運動と筋力増強運動の両方を
行った場合は歩行能力やバランス能力を
改善させる可能性がある。
私なりにまとめると、
トレーニングの方法によって
効果の期待できる項目に
(歩行能力やバランス能力)に
違いがあるということが
言えるかと思います!
実際にトレーニングを行う際は、
体の状態、目標を踏まえて、
どのようなトレーニングをどのぐらいの
期間に行うことで効果が期待できるのかを
吟味しなくてはなりません。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
トレーニング効果を解説しました。
皆さまの少しでもお役に
立てましたらとても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年5月14日)
(更新日:2022年12月31日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Saunders DH, Sanderson M, Hayes S, et al.
Physical fitness training for stroke patients.
Cochrane Database Syst Rev. 03 20 2020;3:
CD003316. doi:10.1002/14651858.
CD003316.pub7
脳卒中患者さんの転倒予防に有効なリハビリとは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の
市川です。
本コラムは脳卒中患者さんの
転倒予防に有効なリハビリについて
解説していきたいと思います。
私が病院勤めだった頃、
患者さんに一人で歩いても良いと
許可を出したときには転んでないか
ドキドキしたものです。
以前、高齢者の転倒は運動で
予防できるのかを解説しました。
まだお読みになられていない方は
こちらをご覧ください!
>>転倒は運動で予防できる!?
脳卒中の患者さんの転倒予防に
有効なリハビリとは?
この疑問に答えた Denissenらの
論文を紹介したいと思います!
この研究では・・・
運動、退院前の自宅訪問、眼鏡(レンズ)の
変更、歩行器の使用、経頭蓋直流電気刺激
などが転倒予防の効果があるのか
調査されました。
※経頭蓋直流電気刺激とは?
頭蓋骨の上から微弱な電気を流す方法です。
その結果は・・・
運動によって転倒率が減少し、
経頭蓋直流電気刺激によって転倒者数を
減らせることがわかりました。
※転倒率とは?
一年間でAさんが転倒した数
※転倒者数とは?
Aさん、Bさん、Cさん・・・
のように人数の合計を表します。
【私が気になるところ】
1点目
運動によって転倒率は減少しましたが、
発症から6ヶ月以上経過した慢性期の
患者さんの転倒率が減少しなかったのです。
2点目
運動、経頭蓋直流電気刺激のどちらも
エビデンス(根拠)としての確実性が
低いことです。
つまり現状では効果があると断言ができない
ということです。
最近、「経頭蓋直流刺激」を簡易刺激装置が
一般でも販売されるようになりました。
しかし安全性の面から日本神経生理学会は
ホームページで注意喚起を行っています。
使用にあたっては担当の医師などに
相談いただくのが良いのかなと思います!
>>経頭蓋直流電気刺激について
>>日本神経生理学会の注意喚起
転倒の原因は様々です。
脳卒中患者さんの転倒予防の方法は
現時点では確立していません。
身体機能だけの一側面ではなく、
環境面の整備など様々な側面からの
アプローチで転倒予防の方法を
考えなければならないのかなと
感じています。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月14日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Denissen S, Staring W, Kunkel D, et al.
Interventions for Preventing Falls in People
After Stroke.Stroke. 03 2020;51(3):e47-e48.
doi:10.1161/STROKEAHA.119.028157
2)理化学研究所ホームページ
https://www.riken.jp/press/2016/20160322_1/
(2022年3月17日閲覧)
3)日本神経生理学会ホームページ
http://jscn.umin.ac.jp/info/2019-03-28.html
(2022年3月17日閲覧)