リハビリコラム
脳卒中患者さんのステッピングトレーニング~運動量と負荷量を増やす意味~
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!
本コラムでは脳卒中患者さんの
ステッピングトレーニングの量や負荷量を
増やすことでどのような効果が得られるのかを
解説したいと思います。
今回はHendersonらの論文を
紹介したいと思います!
この研究には・・・
脳卒中患者さんが656名が
参加しました。
①通常のリハビリ
②移行期
③高負荷トレーニング
この3つの時期に振り分けられ
その効果が検証されました。
ステッピング練習とは?
トレッドミルや平地で歩く練習を
行うことです。
負荷量はどのように決める?
「予測最大心拍数」と「ボルグスケール」を
用いる方法があります。
◎予測最大心拍数
=208-(0.7×年齢)で求めることができます。
この数値の70~80%の心拍数を目標として
Hornbyらの研究では負荷をかけています。
◎ボルグスケール
患者さん自身がどのぐらい運動のツラさや
疲労感を感じているのか表す指標です。
心臓のお薬を飲んでいると、脈拍が
上がりにくくなったりすることもありますので、
運動するリスクを踏まえると既往歴の
確認は必要です。
その結果・・・
高負荷のトレーニングを実施することで
1日の歩数が増加し、加えて歩行速度の
向上や歩行距離が延びることが明らかに
なりました。
本コラムでは脳卒中患者さんの
ステッピングトレーニングの量や負荷量を
増やすことでどのような効果が
得られるのかを解説しました。
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月20日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Henderson CE, Plawecki A, Lucas E,
Lotter JK, Scofield M, Carbone A, Jang JH,
Hornby TG.
Increasing the Amount and Intensity
of Stepping Training During Inpatient
Stroke Rehabilitation Improves Locomotor
and Non-Locomotor Outcomes.
Neurorehabil Neural Repair. 2022
Sep;36(9):621-632.
doi: 10.1177/15459683221119759.
Epub 2022 Aug 25.
PMID: 36004813; PMCID: PMC10189784.
脳卒中患者さんに対する運動イメージ練習の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
運動イメージ練習の効果を
解説したいと思います。
脳卒中患者さんに対するリハビリは、
関節可動域運動、筋力増強運動、
バランス練習、歩行練習などがあり、
それぞれ効果が検証されています。
数あるリハビリメニューの中に
「運動イメージ練習」というものが
あります。
運動イメージ練習とは・・・
実際には運動せずに運動していることを
想像する練習です。
運動イメージ練習は脳卒中理学療法
ガイドラインでも紹介されています。
ちなみに理学療法ガイドライン第2版は
Mindsガイドラインライブラリーという
サイトで一般公開されています。
今回はZhaoらの論文を
紹介したいと思います。
Zhaoらの研究では・・・
①運動イメージ練習+従来のリハビリ
②従来のリハビリ
この2つのグループに分け、
効果を検証しています。
その結果・・・
従来のリハビリに運動イメージ練習を加えると、
運動機能(マヒ側の脚)・歩行能力・バランス能力・
日常生活動作能力が向上したと報告しています。
さらに歩行速度・歩幅・歩行率が向上したと
しています。
運動イメージ練習の良いところ
場所を選ばずどこにいても行え、
自主トレーニングとしても
取り入れやすいところです。
運動イメージ練習の欠点
きちんと運動をイメージするのに
コツが必要なところです。
以上のような良いところ、欠点を踏まえて
運動イメージ練習を組み合わせることも
大切だなと感じています。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
運動イメージ練習の効果を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月18日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Zhao LJ, Jiang LH, Zhang H, Li Y, Sun P,
Liu Y,Qi R.
Effects of Motor Imagery Training for
Lower Limb Dysfunction in Patients
With Stroke: A Systematic Review and
Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.
Am J Phys Med Rehabil. 2023 May 1;102(5):409-418.
doi: 10.1097/PHM.0000000000002107. Epub 2022
Sep 29. PMID: 36170751; PMCID: PMC10125126.
脳卒中患者さんに対する高負荷での歩行練習の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
高負荷での歩行練習の効果を
解説したいと思います。
高負荷での歩行練習は、
歩行速度や持久力を向上させる
効果があるとされています。
Hornby らは高負荷トレーニング(HIT)を
実施した後、日常生活での歩行に
どのような影響があるのかを
報告しています。
高負荷とは・・・
予測最大心拍数の70-80%で
行うトレーニングと定義しています。
予測最大心拍数とは・・・
リハビリでは運動を行うときの負荷量の
目安として算出します。
その計算方法には、様々あります。
Hornby らは・・・
208-(年齢×0.7)の計算式を用いています。
その計算結果(予測最大心拍数)の70~80%の
心拍数を維持しながら行うトレーニングを
高負荷トレーニング(HIT)と言います。
Hornby らは・・・
①(高負荷)トレッドミルや平地での歩行
様々な状況での練習
②(高負荷)で前方への直線歩行練習のみ
③(低負荷)トレッドミルや平地での歩行練習
ここでの低負荷とは予測心拍数の
30~40%の心拍数を維持しながら行う
トレーニングのことです。
①・②・③、3つのグループに分けて
効果を検証しています。
その結果・・・
すべてのグループ
1日当たりの歩数が増加した。
高負荷のトレーニング
歩行速度の向上と歩行距離の
延長がみられた。
(高負荷)トレッドミルや平地での歩行
様々な状況でのトレーニング
バランス能力の向上がみられた
さらには・・・
1日の歩数は歩行距離の変化とも
関係があるとしています。
つまり・・・
高負荷でのトレーニングを様々な状況を
想定して練習を行った方が良いということです。
様々な状況というのは前方だけでなく、
様々な方向に向かって歩く練習や
障害物を越える練習などのことです。
Hornbyらの報告では、高負荷での
トレーニングを行った方が良いという結果でした。
ただし・・・
既往歴や薬の影響で心拍数が変化しにくい
場合などでは高い負荷をかけられないことが
あります。
負荷がかからないのも問題ですが、
運動するリスクにも配慮するにも
必要があるなと感じています。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
高負荷での歩行練習の効果を
解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月17日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Hornby TG, Plawecki A, Lotter JK, Scofield ME,
Lucas E, Henderson CE.
Gains in Daily Stepping Activity in People
With Chronic Stroke After High-Intensity
Gait Training in Variable Contexts.
Phys Ther. 2022 Aug 4;102(8):pzac073.
doi: 10.1093/ptj/pzac073.
PMID: 35670001; PMCID: PMC9396452.
脳卒中患者さんに対する機能的電気刺激(FES)を用いた歩行練習
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
機能的電気刺激(FES)を用いた歩行練習を
解説したいと思います。
FESは電気刺激療法の1つです。
麻痺している筋肉を電気によって
刺激することで、運動機能を補うものです。
脳卒中患者さんでは、歩行中につま先が
うまく挙げられないこと(下垂足)があるため、
その運動機能を補うために、電気刺激を
行います。
その効果については、脳卒中理学療法
ガイドラインではいまだ不明確と記載されて
います。
ちなみに理学療法ガイドライン第2版は
Mindsガイドラインライブラリーという
サイトで一般公開されています。
ガイドラインでは「効果は不明確」という
ことですが、効果が得られている研究結果も
報告されているため、実施する際には
より検討が必要かと思います。
今回はガイドライン公表以降に報告された
Dantasらの論文を紹介したいと思います。
Dantasらの研究では・・・
①FES+トレッドミルトレーニング
②トレッドミルトレーニングのみ
この2つのグループに分け、
途中(6週間)でグループの入れ替えを
行い、効果を検証しています。
つまり・・・
FES+トレッドミルトレーニングを続けて行い、
その後トレッドミルトレーニングのみに切り替えた
ということになります。
逆も然りで、トレッドミルトレーニングのみを
続けて行い、その後FES+トレッドミル
トレーニングに切り替えています。
その結果・・・
両グループ
感覚運動障害、バランス、協調性、
持久力の改善が見られた。
トレッドミルトレーニングのみから実施した
協調性が改善がみられた。
FES+トレッドミルトレーニングから実施した
歩行能力の改善がみられたと報告しています。
グループによって、協調性・歩行能力改善に
違いがみられたのはなぜだろうと疑問に
感じました。
効果の大きさでみるとどのような結果に
なるのか気になるところです。
これはリハビリ全般に言えることですが、
論文1つだけで判断するのではなく、
様々な研究報告を吟味する必要が
あるなと感じています。
その上で、最終的には実施方法については
お一人お一人の病態を考えた上で
検討することが大事なと思います。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
FESを用いた歩行練習についてを
解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月16日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Dantas MTAP, Fernani DCGL, Silva TDD,
Assis ISA, Carvalho AC, Silva SB, Abreu LC,
Barbieri FA,Monteiro CBM.
Gait Training with Functional Electrical Stimulation
Improves Mobility in People Post-Stroke. Int J Environ
Res Public Health. 2023 May 5;20(9):5728.
doi: 10.3390/ijerph20095728.
PMID: 37174247; PMCID: PMC10178257.
足関節底屈筋と歩行時の推進力との関係性
こんにちは!歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の
代表市川です。
本コラムでは脳卒中患者さんの
足関節底屈筋と歩行時の推進力との関係性を
解説したいと思います。
※足関節底屈筋とは?
足のつま先を下げるとき、立っている時や
かかと挙げをするときに働く筋肉です。
代表的なのが、下腿三頭筋。
ふくらはぎの筋肉です!
Awadらによれば、
足関節底屈の筋力と歩行時の推進力は
関係しないと報告されています。
しかし、足関節底屈筋力を生み出す能力は
歩行時におけるマヒ側の推進力、
歩行速度ともに関係するとされています。
実際に発揮されている力と
本来もっている力(潜在能力)の差が
大きいと、筋力を生み出す能力が
低下しているということになります。
さらにHsiaoらによれば、推進力を
生みだすには、立脚後期で
「股関節をいかに後ろに伸ばせるのか」が
より重要であると報告しています。
私としては、股関節を後ろに伸ばした位置に
キープするためにも足関節底屈筋の働きは
重要だと思います。
そのためは、単に足関節底屈筋の
筋力トレーニングを行うだけではなく、
筋肉が十分な力を発揮できるための
質的な改善も必要なのかなと思います。
本コラムでは脳卒中患者さんの
足関節底屈筋と歩行時の推進力との
関係性を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年3月10日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Awad LN, Hsiao H, Binder-Macleod SA.
Central Drive to the Paretic Ankle Plantarflexors
Affects the Relationship Between Propulsion
and Walking Speed After Stroke.
J Neurol Phys Ther. 2020 Jan;44(1):42-48.
doi: 10.1097/NPT.0000000000000299.
PMID: 31834220; PMCID: PMC8049399.
2)Hsiao H, Knarr BA, Higginson JS,
Binder-Macleod SA.
The relative contribution of ankle moment and
trailing limb angle to propulsive force during gait.
Hum Mov Sci. 2015 Feb;39:212-21.
doi: 10.1016/j.humov.2014.11.008. Epub 2014 Dec 12.
PMID: 25498289; PMCID: PMC4272868.