リハビリコラム
変形性関節症に対するリハビリ~運動療法 VS 運動療法+補助療法
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは変形性関節症に対する
運動療法と組み合わせて行う補助療法の
効果を解説します。
今回はFrenchらの論文を
紹介したいと思います。
Frenchらは変形性股関節症と
変形性膝関節症の患者さんを
対象としています。
運動療法とは・・・
体重負荷、ウォーキング、筋力トレーニングなどの
ことで、痛みや身体機能改善のみならず、
幸福感や自己効力感にも良い影響があると
されています。
補助療法とは?
ここでは電気刺激療法(TENS)、温熱療法、
寒冷療法、徒手療法、心理療法、
減量(ダイエット)などが挙げられています。
Frenchらの論文はシステマティックレビュー、
メタアナリシスというタイプです。
いわば論文の総集編、似たような論文を
集め、検討したものです。
※論文を集めたり、どの論文を採用するのか
どうかなど検討をしています。
Frenchらの報告によると、
①運動療法のみ
②運動療法+補助療法
①と②を比べると、
痛み、身体機能、生活の質への効果に
差があるとは言えないとしています。
ただし運動療法+補助療法で改善が
見られたとする研究報告もあることから
一概には言えないとしています。
論文を読んでみて・・・
①変形性関節症の重症度によって
効果が異なる?
②股関節と膝関節の双方の関節症を
統合していることが結果に影響した?
③運動療法そのもの自体の効果が
大きい可能性がある?
などが気になりました。
似たような研究報告でどのような結果が
導き出されているのか、また補助療法
それぞれの効果についても調べる必要が
ありそうです。
やはり、患者さんの状態を丁寧に
検査・評価し、そして明らかになった
課題に対してアプローチを行うということは
大切なのかも知れません。
本コラムでは変形性膝関節症に対する
運動療法と組み合わせて行う補助療法の
効果を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月7日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)French HP, Abbott JH, Galvin R.
Adjunctive therapies in addition to land-based
exercise therapy for osteoarthritis of the hip or knee.
Cochrane Database Syst Rev. 2022 Oct 17;10(10):
CD011915. doi: 10.1002/14651858.CD011915.
pub2. PMID: 36250418; PMCID: PMC9574868.
変形性膝関節症に対する自主トレーニングの効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは変形性膝関節症に対する
自主トレーニングの効果を
解説したいと思います。
変形性膝関節症とは・・・
膝関節の関節軟骨や骨(軟骨下骨)が
変性することで、痛みや変形が
生じます。
クリニックや病院の先生から、自宅でも
トレーニングを行うようにと言われたことは
一度はあるのではないでしょうか。
今回は自主トレーニングの効果を検証した
Siらの研究を紹介したいと思います。
Siらの論文はシステマティックレビュー、
メタアナリシスというタイプです。
いわば論文の総集編、似たような論文を
集め、検討したものです。
※論文を集めたり、どの論文を採用するのか
どうかなど検討をしています。
Siらの論文では、
自主トレーニングを筋力増強運動、
柔軟体操、バランストレーニングなどが
定義されています。
その効果を検証した結果、
痛み、身体機能、生活の質を
改善する可能性があることが
明らかになりました。
さらに自宅での運動を行わない場合や
健康に関する教育(冊子やインターネット)よりも
痛みや身体機能を改善する可能性が
あることが明らかになりました。
Siらの研究結果より自主トレーニング
そのものの効果が明らかになりました。
その自主トレーニングの内容を
吟味することも大切で、ときに健康に
関する情報
(変形性膝関節症に関する正しい知識)を
共有することも必要かなと思います。
つまり自宅でもオーダーメイドの
トレーニングが重要であると
私の経験で感じています。
本コラムでは変形性膝関節症に
対する自主トレーニングの効果を
解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月7日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Si J, Sun L, Li Z, Zhu W, Yin W, Peng L.
Effectiveness of home-based exercise interventions
on pain, physical function and quality of life
in individuals with knee osteoarthritis:
a systematic review and meta-analysis.
J Orthop Surg Res. 2023 Jul 17;18(1):503.
doi: 10.1186/s13018-023-04004-z.
PMID: 37461112; PMCID: PMC10351144.
変形性膝関節症と腰椎症の関係性
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは変形性膝関節症と
腰椎症の関係性を解説したいと思います。
変形性膝関節症とは・・・
膝関節の関節軟骨や骨(軟骨下骨)が
変性することで、痛みや変形が
生じます。
腰椎症とは・・・
椎間板、椎体、そして関節に変性が
生じるものを「(変形性)脊椎症」と言います。
それが腰椎に生じたものが「腰椎症」と
呼ばれています。
この2つの関係を明らかにした
Betzlerらの研究を紹介したいと思います。
Betzlerらの論文はシステマティックレビュー、
メタアナリシスというタイプです。
いわば論文の総集編、似たような論文を
集め、検討したものです。
※論文を集めたり、どの論文を採用するのか
どうかなど検討をしています。
Betzlerらの論文によれば、
変形性腰椎症の患者さんは変形性膝関節症
(KLグレード2以上)の要因を持っており、
また変形性膝関節症の患者さんは
変形性腰椎症の要因をもつことが
わかりました。
つまり・・・
変形性膝関節症と腰椎症は
関係する可能性が示唆されたという
ことになります。
※KLグレードとは・・・
レントゲンによって、変形性膝関節症の
重症度を判定するものです。
グレード0~4まであり、0は正常であり、
4は高度(重度)と判定されます。
<詳しく知りたい方へ>
この研究ではオッズ比(OR)で検討されています。
・腰椎症患者さんの変形性膝関節症
ランダム効果モデル:OR1.75(1.22-2.5)
固定効果モデル:OR2.02(1.75-2.32)
・変形性膝関節症患者さんの腰椎症
ランダム効果モデル:OR1.84(1.23-2.77)
固定効果モデル:OR2.06(1.78-2.37)
私の経験からも・・・
腰椎症によって前弯が少なくなる
(腰が丸くなる)ことで、膝関節が曲げて
立ったり、歩くようになります。
膝関節が曲がっていると膝関節は
支えている靭帯が緩み、不安定になります。
その結果、痛みを生じている方を
担当したことがあります。
変形性膝関節症との診断があるときも腰椎症で
あるときも、双方の関係性を踏まえた上で
検査・評価を行い、リハビリを実施した方が
良さそうですね。
本コラムでは変形性膝関節症と
腰椎症の関係を解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月7日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Betzler BK, Ng FYC, Huang Y, Hr BAR.
The Prevalence of Coexisting Lumbar Spondylosis
and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review
and Meta-Analysis.
Asian Spine J.
2022 Dec;16(6):839-847. doi: 10.31616/asj.
2021.0405. Epub 2022 Apr 18.
PMID: 35421911; PMCID: PMC9827201.
変形性膝関節症の患者さんが手術を受けるときの不安
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは変形性膝関節症の
患者さんが手術を受けるときの
不安についてを解説したいと思います。
ここでの手術は「人工膝関節全置換術」
のことです。英語ではTotal Knee arthrolasty
といい、TKAと略されます。
変形性膝関節症が進行し、痛みが強くなってくると
手術の選択肢が出てくることがあります。
その手術の1つがTKAです。
TKAに関連した不安はどのようなものなのか
明らかにしたJungらの研究を紹介したいと思います。
Jungらの研究には、
65歳以上の中等度から重度の
変形性膝関節症を患っている方が
対象となりました。
不安に関してはSTAIという評価を
用いて点数化しています。
ちなみに点数が高いほど、不安が
高いことを示しています。
その結果・・・
TKAを勧められた時や手術を
待機しているときに不安が
強くなることがわかりました。
手術の不安を和らげるためには、
医療スタッフへの信頼や医師(外科医)に
よる説明が重要であることもわかっています。
手術だけではなく、初めてリハビリを受けるときも
患者さんはとても不安を感じていると思います。
そのようなときに、リハビリに関わる者として、
自身の行動や伝え方など工夫することで、
不安を少しでも和らげることに繋がるのかも
知れません。
また患者さん本人のみならず、ご家族で
あったり、ご友人であったり、周りの方への
サポートも大切なのかなと実体験を
もって感じています。
本コラムでは変形性膝関節症の
患者さんが手術を受けるときの
不安についてを解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年11月6日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Jung KH, Park JH, Ahn JW, Park KB.
Surgery-related anxiety on geriatric patients
undergoing total knee arthroplasty:
a retrospective observational study.
BMC Musculoskelet Disord. 2023
Mar 3;24(1):161. doi: 10.1186/
s12891-023-06252-w.
PMID: 36864411; PMCID: PMC9983228.
パーキンソン病患者さんのすくみ足に対して効果的なリハビリとは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムではパーキンソン病患者さんの
すくみ足に効果的なリハビリを
解説したいと思います。
1.すくみ足とは?
すくみ足とは、
”足がすくみ歩き始めの1歩目が
前に出せないこと”を言います。
zhangらによれば、すくみ足は
Hoehn&Yahrの重症度分類や
固縮、UPDRSパート2・パート3の
得点と関係すると言われています。
※Hoehn&Yahrの重症度分類
パーキンソン病の進行度合いを
表すものです。
※固縮
筋肉のこわばりのことです。
例えば肘を伸ばそうとすると、
全可動域を通じて抵抗感が
感じられます。
※UPDRS
(Unified Parkinson‘s Disease Rating Scale)
パーキンソン病の症状を詳しく調べる検査です。
全4パートから構成されます。
パート2は日常生活動作、パート3は
運動症状を調べるものです。
2.リハビリの方法
アメリカ理学療法士協会のガイドラインや
Millerら、Tomilisonらのメタアナリシス・
システマティックレビューでは、
①視覚・聴覚のキューイング
②バランストレーニング
③歩行練習
主にこの3つの方法が推奨または、
効果があると報告されています。
メタアナリシスとは、統計学的手法を
用いて、同じような研究の結果を
まとめる分析方法です。
このメタアナリシスの結果をみると、
統合した結果は効果があると
していますが、個々の結果をみると
効果があるとは言えない研究が
含まれています。
つまり、理学療法はすくみ足に
効果があるとされながらも、
理学療法の中身をみると、
効果があると言えないものも
あるということになります。
3.介入のポイント
Ehgoetzらによれば、すくみ足には
サブタイプ(分類)があると言われています。
①運動
②不安
③注意
この3つのサブタイプに分けることができる
ため、病態に基づき、介入方法を変える
必要があると考えられます。
つまり、運動だけで効果が得られない
可能性があるということです。
本コラムでは、パーキンソン病患者さんの
すくみ足に対する効果的なリハビリを
解説しました。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年3月25日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Zhang F, Shi J, Duan Y, Cheng J, Li H,
Xuan T,Lv Y, Wang P, Li H.
Clinical features and related factors of
freezing of gait in patients withParkinson's disease.
Brain Behav. 2021 Nov;11(11):e2359.
doi: 10.1002/brb3.2359. Epub 2021 Sep 22.
PMID: 34551452; PMCID: PMC8613420.
2) Osborne JA, Botkin R, Colon-Semenza C,
DeAngelis TR,Gallardo OG, Kosakowski H, Martello J,
Pradhan S, Rafferty M,Readinger JL, Whitt AL, Ellis TD.
Physical Therapist Management of Parkinson Disease:
A Clinical Practice Guideline From the American
Physical Therapy Association.
Phys Ther. 2022 Apr 1;102(4):pzab302.
doi: 10.1093/ptj/pzab302. Erratum in:
Phys Ther. 2022 Aug 1;102(8):
PMID: 34963139; PMCID: PMC9046970.
3) Miller KJ, Suárez-Iglesias D, Seijo-Martínez M, Ayán C.
Physiotherapy for freezing of gait in Parkinson's disease
: a systematic review and meta-analysis.
Rev Neurol. 2020 Mar 1;70(5):161-170. Spanish,
English. doi: 10.33588/rn.7005.2019417. PMID: 32100276.
4)Tomlinson CL, Patel S, Meek C, Clarke CE, Stowe R,
Shah L, Sackley CM, Deane KH, Herd CP,
Wheatley K, Ives N.
Physiotherapy versus placebo or no intervention
in Parkinson's disease. Cochrane Database Syst Rev.
2012 Jul 11;(7):CD002817.doi:10.1002/14651858.
CD002817.pub2. Update in: Cochrane Database
Syst Rev. 2012;(8):CD002817. PMID: 22786482.
5) Ehgoetz Martens KA, Shine JM, Walton CC,
Georgiades MJ, Gilat M,
Hall JM, Muller AJ, Szeto JYY, Lewis SJG.
Evidence for subtypes of freezing of gait
in Parkinson's disease.
Mov Disord. 2018 Jul;33(7):1174-1178.
doi: 10.1002/mds.27417. PMID: 30153383.