リハビリコラム
脳卒中患者さんの転倒予防に有効なリハビリとは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の
市川です。
本コラムは脳卒中患者さんの
転倒予防に有効なリハビリについて
解説していきたいと思います。
私が病院勤めだった頃、
患者さんに一人で歩いても良いと
許可を出したときには転んでないか
ドキドキしたものです。
以前、高齢者の転倒は運動で
予防できるのかを解説しました。
まだお読みになられていない方は
こちらをご覧ください!
>>転倒は運動で予防できる!?
脳卒中の患者さんの転倒予防に
有効なリハビリとは?
この疑問に答えた Denissenらの
論文を紹介したいと思います!
この研究では・・・
運動、退院前の自宅訪問、眼鏡(レンズ)の
変更、歩行器の使用、経頭蓋直流電気刺激
などが転倒予防の効果があるのか
調査されました。
※経頭蓋直流電気刺激とは?
頭蓋骨の上から微弱な電気を流す方法です。
その結果は・・・
運動によって転倒率が減少し、
経頭蓋直流電気刺激によって転倒者数を
減らせることがわかりました。
※転倒率とは?
一年間でAさんが転倒した数
※転倒者数とは?
Aさん、Bさん、Cさん・・・
のように人数の合計を表します。
【私が気になるところ】
1点目
運動によって転倒率は減少しましたが、
発症から6ヶ月以上経過した慢性期の
患者さんの転倒率が減少しなかったのです。
2点目
運動、経頭蓋直流電気刺激のどちらも
エビデンス(根拠)としての確実性が
低いことです。
つまり現状では効果があると断言ができない
ということです。
最近、「経頭蓋直流刺激」を簡易刺激装置が
一般でも販売されるようになりました。
しかし安全性の面から日本神経生理学会は
ホームページで注意喚起を行っています。
使用にあたっては担当の医師などに
相談いただくのが良いのかなと思います!
>>経頭蓋直流電気刺激について
>>日本神経生理学会の注意喚起
転倒の原因は様々です。
脳卒中患者さんの転倒予防の方法は
現時点では確立していません。
身体機能だけの一側面ではなく、
環境面の整備など様々な側面からの
アプローチで転倒予防の方法を
考えなければならないのかなと
感じています。
本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月14日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Denissen S, Staring W, Kunkel D, et al.
Interventions for Preventing Falls in People
After Stroke.Stroke. 03 2020;51(3):e47-e48.
doi:10.1161/STROKEAHA.119.028157
2)理化学研究所ホームページ
https://www.riken.jp/press/2016/20160322_1/
(2022年3月17日閲覧)
3)日本神経生理学会ホームページ
http://jscn.umin.ac.jp/info/2019-03-28.html
(2022年3月17日閲覧)
知っておきたい!脳卒中患者さんに対する電気刺激療法の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)
代表の市川です。
本コラムは脳卒中患者さんに対する
電気刺激療法の効果を解説して
いきたいと思います。
最近、家電量販店さんに家庭用の
電気刺激装置が販売されているのを
ご存じでしょうか?
テレビのコマーシャルでご覧に
なった方もいらっしゃると思います。
電気刺激療法の効果として、
①手や足を動きを良くする
②筋肉が痩せることを予防する
③痙縮を和らげる
などがあります。
Sharififarらによれば、
通常のリハビリに電気刺激療法を
追加すると、バランス能力・歩行能力・
つま先をあげる力(背屈する力)が向上する
ということが明らかにされています。
※この論文には、電気鍼(はり)治療の
効果が含まれておりますので、
解釈には注意!!
ただし!電気をただ流せば良いかというと
そうではありません。
身体の状態や目的に合わせて、
電気を流す場所、電気の強さ、
治療時間などの調節が必要です。
例えば・・・
手や足の動きの改善なのか、
痙縮を和らげるためのなのかに
よって方法も変える必要があります。
その調整が不十分であると、
その効果も半減してしまうかも
知れません。
本コラムでは脳卒中患者さんに対する
電気刺激療法を解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年5月28日)
(更新日:2023年12月4日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Sharififar S, Shuster JJ, Bishop MD.
Adding electrical stimulation during standard
rehabilitation after stroke to improve motor
function. A systematic review and meta-
analysis. Ann Phys Rehabil Med. Sep2018;61(5):
339-344. doi:10.1016/j.rehab.2018.06.005
知っておきたい!リハビリに役立つ脳の話
こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
脳は大脳、小脳、脳幹などに
分けることができます。
その中でも小脳を例に、脳について
解説していきたいと思います!
小脳の機能はおおよそ4つに
分けることができます。
①平衡感覚・目の動き
②手・足・体幹(胴)の筋肉の調整
③理解力・判断力などの認知機能
④喜んだりや悲しむなどの情動
小脳がダメージを受けると・・・
①~④の機能や調節がスムーズに
いかなくなってしまいます。
例えば・・・
小脳に脳梗塞や脳出血が起きると、
ペットボトルをとろうとしたときに、
手が震えてしまい、滑らかに手を
伸ばすことが難しくなったりします。
私が大学に在籍していた頃、
さきほど出てきた①~④のような
脳の部位ごとの機能を
一生懸命に覚えました。
しかし・・・
いざ現場に出るとその知識だけでは、
太刀打ちできませんでした。
それはなぜか・・・
脳の部位ごとの機能だけではなく、
脳は様々な場所がネットワークで
つながっていることも考えなくては
ならなかったからです。
脳の場所のどこでダメージがあるのかに
よって、リハビリの方法や環境だけでなく
言葉がけも慎重にならなければならない
こともあります。
だからこそ・・・
リハビリに携わる身として
脳のことを知ることが大切なのです。
最近、理化学研究所のニュースで
小脳の働きの可視化に成功したと発表が
ありました。
可視化されたことで、小脳が運動を
どのように調整しているのかが
より鮮明にわかるようになり、
リハビリの現場での応用も
期待されています。
>>理化学研究所 小脳の可視化について
このように脳の研究はどんどん進んでいます。
それに合わせてリハビリに必要な知識も
どんどん増えていきます。
私は新しい知見にアンテナを張り、
情報を吟味した上で、患者さんや
利用者さんに還元できたらと
常々感じています。
皆さまの何かのお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年6月3日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)大村優慈.リハに役立つ脳画像,p70~71.
MEDICAL VIEW.2016
2)理化学研究所 小脳可視化の資料 (2022年3月4日閲覧)
脳梗塞とは?
今回のコラムは脳梗塞について
解説したいと思います。
くも膜下出血、脳出血、脳梗塞、
一過性脳虚血発作を合わせて
脳卒中と言います。
脳梗塞は脳卒中の中の一つです。
脳梗塞は脳の血管がつまる病気です。
元プロ野球選手の長嶋茂雄さん、
落語家の三遊亭円楽さんが発症したと
ニュースになりました。
脳梗塞の原因には3つあります。
①血栓性
②塞栓性
③血行力学性
①血栓性
血栓性というのは血管(動脈)の
アテローム硬化によって生じます。
アテロームというのは、
”お粥のような粘り気のあるもの”です。
そのアテロームが血管をふさいだり、
アテロームに血小板が付着し血管を
ふさいだりします。
血流によってそのアテロームの一部が
はがれ血管を詰まらせることがあります。
これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、
脳梗塞の前兆とも言われています。
②塞栓性
脳の血管とは違う場所でできた血の塊の
”血栓”が血管をふさいでしまうものです。
主に心房細動などの不整脈、弁膜症などの
原因によってできた血栓が、脳の血管を
つまらせます。
③血行力学性
心臓から血液を送り出す力が弱かったり、
首の動脈が狭くなると血流自体が
少なくなり、脳梗塞を発症することが
あります。
以上のように脳梗塞は血栓性、塞栓性、
血行力学性と主に3つの原因があります。
※他にも原因があります。
脳梗塞・脳出血が起きた場所によって、
症状が変わります。
手や足にまひが出てたり、触っている
感覚がわかりにくくなったり、言葉が
出づらくなったりと様々な症状があります。
私が脳卒中の患者さんのリハビリを担当し、
同じような症状の方はいらっしゃっても
全く同じ症状の方はいらっしゃいません
でした。
だからこそ目の前の患者さんや利用者さんの
症状や生じている現象を丁寧に紐解くことが
大事だと思います。
脳梗塞を起こした部分のみに目が
行きがちですが、脳梗塞の影響を
あまり受けなかった部分のことも
考えることも必要と感じています。
今回は脳梗塞についてを書きました。
皆さまの何かのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みくださり
ありがとうございました。
参考文献
1)村上裕二(総監修).新・病態生理できった内科学7
神経疾患,p172~174.医学教育出版社.2006
脳卒中患者さんの痙縮に対する振動刺激療法
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT(アルコネクト)
代表の市川です。
先日、日本物理療法学会主催で行われた
脳卒中患者さんの痙縮に対する振動刺激の
勉強会に参加しました。
※振動刺激療法とは?
家電量販店にも売っている
持ち運び可能なマッサージ器を
利用したリハビリです。
※痙縮とは?
手や足が突っ張ってしまったり、
こわばってしまう症状のことです。
痙縮のある筋肉またはその裏に
ある筋肉にマッサージ器を当てて
刺激します。
例えば・・・
腕の力こぶの筋肉に痙縮があるとします。
その場合、マッサージ器を力こぶの筋肉、
またその裏にある二の腕の筋肉に当てます。
”痙縮に対して振動刺激が効果的”と
ある医師から聞いたことはあったのですが、
勉強会をきっかけに論文を調べてみました。
Avvantaggiatoらによれば
振動刺激療法は、肘や手首の痙縮に
効果的であると報告されていました。
実際にリハビリで行う場合は、
マッサージ器を当てる場所・当てる時間など
検討する必要があります。
その方法さえしっかりと利用者さんと
リハビリ専門職が共有できれば、
自主トレーニングとしても
行いやすい方法だなと思います。
本コラムでは脳卒中患者さんの痙縮に対する
振動刺激療法について解説しました。
少しでも何かのお役に立てましたら
幸いです。
最後までお読みくださり
ありがとうございました。
(執筆日:2022年5月14日)
(更新日:2023年2月27日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Avvantaggiato, Christian, Roberto Casale,
Nicoletta Cinone,et al. 2021.
Localized Muscle Vibrationin the Treatment of
Motor Impairment andSpasticity in Post-Stroke
Patients: A Systematic Review.
European Journalof Physical and Rehabilitation
Medicine 57 (1): 44–60.