リハビリコラム
知っておきたい!脳卒中患者さんのストレッチの効果
こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回は脳卒中の患者さんの痙縮や
腕や手の関節に対するストレッチの
効果を解説したいと思います!
痙縮とは・・・
手や足が突っ張ってしまったり、
こわばってしまう症状です。
脳卒中の患者さんの25.3~39.5%の
割合で生じるとされており、
関節が固まってしまったり、
痛みの原因になることもあります。
リハビリの現場で行われるストレッチ。
果たして痙縮を和らげたり、腕や手の
関節可動域を広げる効果は
あるのでしょうか?
その疑問に答えたSalazarらの
論文を紹介したいと思います!
※可動域・・・
動く範囲のことです。
可動域が広がるということは、関節を
大きく動かせるということです。
この論文でのストレッチとは・・・
①手につける装具を使用したストレッチ
②通常行われる筋肉を伸ばすストレッチ
(静的ストレッチと呼ばれる方法で
ジワーっと伸ばすストレッチです。)
結果は・・・
装具を使用した手首のストレッチは
手首を曲げる筋肉の痙縮を
軽減できることがわかりました。
反対に・・・
通常行われるストレッチと
リハビリ(理学療法)とを比べた場合、
腕や手の関節可動域には
差がないことがわかりました。
装具を装着することで長い時間を
かけて筋肉を伸ばすことができます。
そのため、リハビリの時間以外にも
行える点がメリットです。
しかし・・・
腕や手を触っている感覚が
わかりにくい場合には、
装具が接触している部分に
傷ができないように注意が必要です。
また装具には多くの種類があります。
現在、病院、デイケアなどでリハビリを
されている方であれば、適応も含めて
担当者にご相談するのも良いかも
知れません!
本コラムでは脳卒中の患者さんの
ストレッチの効果を解説しました。
皆さまの何かのお役に
立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年6月18日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Salazar AP, Pinto C, Ruschel Mossi JV, at al.
Effectiveness of static stretching positioning on
post-stroke upper-limb spasticity and mobility:
Systematic review with meta-analysis.
Ann Phys Rehabil Med. 2019 Jul;62(4):274-282.
doi: 10.1016/j.rehab.2018.11.004. Epub 2018
Dec 22. PMID: 30582986.
2)Zeng H, Chen J, Guo Y, Tan S. Prevalence and
Risk Factors for Spasticity After Stroke:
A Systematic Review and Meta-Analysis.
Front Neurol. 2021 Jan 20;11:616097.
doi: 10.3389/fneur.2020.616097. PMID: 33551975;
PMCID: PMC7855612.
知りたい!脳卒中患者さんの歩行回復の予後とは?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回は脳卒中の患者さんの歩行回復の
予後を解説したいと思います!
歩行回復の予後に影響がある
脳の場所はいったいどこなのか?
その疑問に答えたLeeらの
論文を紹介したいと思います!
※予後とは?
今後の見通しのことです。
この論文では、
MRIを使い、脳卒中の患者さんの
歩行回復に影響がある脳の場所を
調査しています。
※MRIとは?
主に病変を見つけるために
使われる検査のことです。
結果は・・・
放線冠、内包、被殻、尾状核などが
歩行回復に関係がある
ということがわかりました。
また発症後6ヶ月を通じて徐々に
歩行自立度が向上していくことも
明らかにされています。
つまり・・・
歩行を自立された方の割合が
6ヶ月を経て徐々に増えた
ということです。
ちなみに6ヶ月間はリハビリを
行っています。
リハビリ専門の病棟である
回復期リハビリテーション病棟。
疾患によって入院日数の
上限が決められています。
例えば脳卒中の方であれば、
150~180日間は入院できます。
しかし・・・
入院日数は年々減少傾向にあり、
全国平均で2ヶ月程度と言われています。
私が所属していた回復期リハビリテーション
病棟も平均入院日数も全国平均に
近いものでした。
つまり・・・
Leeら研究結果と平均入院日数の
関係性をみると、退院した患者さんの中に
まだまだ改善の見込みのある方が
いらっしゃる可能性が考えられるのです。
歩行回復に影響がある
脳の場所がダメージを受けたから
必ずしも歩行が困難になると
いうわけでもありません。
あくまで研究結果の一つであり、
脳卒中の症状にも個人差が
あるように歩行回復の予後に
違いがあります。
そこで大切なのは、
詳しく身体の状態を検査することです。
例えば・・・
関節の動き、筋力、バランス能力などです。
もちろんリハビリ専門職だけではなく
医師や看護師、介護士などの
様々な専門職の見解を踏まえて
検討することが大事です。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
歩行の予後を解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月20日)
(更新日:2023年2月12日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Lee KB, Kim JS, Hong BY, at al.
Brain lesions affecting gait recovery in stroke
patients. Brain Behav. 2017 Oct 25;7(11):e00868.
doi: 10.1002/brb3.868. PMID: 29201557;
PMCID: PMC5698874.
知っておきたい!脳卒中の患者さんが使用する短下肢装具の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回は脳卒中の患者さんが使用する
短下肢装具の効果を解説したいと思います!
※短下肢装具とは?
足に装着する装具のことです。
「装具を作製したけれど、
どんな効果があるのだろう?」と
疑問に思ったことはありませんか?
この疑問に答えたChooらの
論文を紹介したいと思います!
この論文では・・・
短下肢装具を装着することによって
歩行速度、歩幅、バランスを含む
歩行能力、歩行時の足関節、膝関節、
股関節の角度にどのような影響が
あるのかを調査しています。
その結果・・・
短下肢装具を使用することで
歩行速度、バランスを含む歩行能力が
向上し、歩幅も拡大、歩行時の足首や
膝関節の角度が大きくなることが
わかりました。
つまり・・・
足の装具を使用することで、
歩行能力が向上することがわかりました。
短下肢装具には、
プラスチック製、金属製、
カーボン製などの材質があります。
継手(足首の関節に相当する部分)が
あるもの、ないものもあり、ベルトの
本数、装具の長さ、形も様々です。
中にはお風呂専用の装具もあります。
歩行能力向上のためだけでなく、
拘縮の予防、歩行時のつま先の
ひっかかりを防止するためなどを
目的として作製されることもあります。
痙縮、感覚障害、つま先を上に挙げる力
(背屈といいます)、足首の関節の柔らかさ、
むくみの状態などや生活状況、想定される
使用環境を踏まえて作製することが
大切だなと感じています。
※拘縮とは?
関節や筋肉が固くなってしまうことです。
※痙縮とは?
手や足が突っ張ってしまったり、
筋肉がこわばってしまう症状です。
私が病院に勤めていた頃、
退院した患者さんから装具の相談を
受けることがとても多くありました。
そのため、退院後の装具の悩みを
解決できるような体制を医師や
義肢装具士の方と相談し
立ち上げた経験もあります。
リハビリ専門職として、
装具を作製したら終わりではなく、
他の職種と連携しその後のフォローも
必要と考えています。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
短下肢装具の効果を解説しました。
皆さまの少しでもお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月20日)
(更新日:2023年1月1日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Choo YJ, Chang MC. Effectiveness of an
ankle-foot orthosis on walking in patients
with stroke: a systematic review and
meta-analysis. Sci Rep. 2021 Aug 5;11(1):
15879. doi: 10.1038/s41598-021-95449-x.
PMID: 34354172; PMCID: PMC8342539.
知りたい! 後ろ歩きの練習は、どんな効果があるの?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは、後ろ歩きの練習をすると
どんな効果が期待できるのかを解説します!
<脳卒中>
Chenらによると・・・
<内容>
・後ろ歩き
・後ろ歩き+従来のリハビリ
<頻度・時間・期間>
週3~8回・10~30分・1~3週間
歩行速度・ケイデンス(一定時間の歩数)・
マヒ側の歩幅・歩行の対称性・バランス・
歩行能力の向上したとしています。
Wenらによると・・・
<内容>
・後ろ歩き
・従来のリハビリ(運動)
<頻度・時間・期間>
週3~6回・30~40分・3~4週間
前方への歩行練習+従来のリハビリを
行った場合に比べて、歩行速度・ケイデンス
(一定時間の歩数)・バランス・マヒ側の歩幅が
向上したと報告しています。
Chenらの報告の結果と、似ていますよね!
Changらのパイロット研究によると・・・
<内容>
・トレッドミルでの後ろ歩き
・従来の理学療法
<頻度・時間・回数>
週3回・30分・4週間
従来の理学療法では、6分間歩行距離が
延長するのみだったのに対して、
後ろ歩きの練習を行ったグループは、
バランス・歩行能力・歩行速度・
6分間歩行・FVC(肺活量)やFEV1.0
(呼吸量)などの肺機能の改善が
得られたと報告しています。
<注意点>
研究によっては、
介入群(後ろ歩きを実施した)も
対照群(後ろ歩きを実施しない)においても
介入方法が統一されていない場合もある点に
注意が必要です。
どういうことかというと
比較対象となったグループ(対照群)も
歩行練習や従来のリハビリを行っている
場合もあるため、そのことが結果に
影響を及ぼしている可能性があります。
後ろ歩きを練習する場合は、
練習の特性上、転倒に十分な
注意が必要です。
現在、リハビリを行っている方でしたら
担当スタッフにご相談いただくのも
良いかも知れません!
今回は脳卒中の患者さんが行う
後ろ歩きの効果を解説しました。
本コラムが皆さまの少しでもお役に
立てましたらとても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月16日)
(更新日:2023年9月8日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Chen, Ze-Hua et al.
“Effectiveness of backwardwalking for people
affected by stroke: A systematicreview and
meta-analysis of randomized controlled trials.
” Medicine vol. 99,27 (2020): e20731. doi:10.1097/
MD.0000000000020731
2)Wen, Hongwei, and Min Wang.
“Backward Walking Training Impacts Positive Effect on
Improving Walking Capacity after Stroke: A Meta-Analysis.
” International journal of environmental research
and public health vol. 19,6 3370. 12 Mar. 2022,
doi:10.3390/ijerph19063370
3)Chang, Ken-Wei et al.
“The Effect of Walking Backward on a Treadmill on
Balance, Speed of Walking and Cardiopulmonary Fitness
for Patients with Chronic Stroke: A Pilot Study.”
International journal of environmental research and
public health vol. 18,5 2376. 1 Mar. 2021,
doi:10.3390/ijerph18052376
4)Moon, Yiyeop, and Youngsook Bae.
“The effect of backward walking observational training
on gait parameters and balance in chronic stroke:
randomized controlled study.” European journal of
physical and rehabilitation medicine vol. 58,1 (2022):
9-15. doi:10.23736/S1973-9087.21.06869-6
5) Bansal, Kanika et al.
“Does Falls EfficacyInfluence the Relationship Between
forward and Backward Walking Speed After Stroke?.”
Physical therapy vol. 101,5 (2021): pzab050.
doi:10.1093/ptj/pzab050
知っておきたい!脳卒中の患者さんのトレーニング効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本日は脳卒中の患者さんの
トレーニング効果を解説します!
当施設の近くには女性専用の
スポーツジムがあります。
多くの女性が開店前から
お店の前に並んでいます。
昨今では、健康関心が高まっているためか
普段からランニングをしたり、
スポーツジムで体を鍛えたりする方も
前より多いのかなと思います。
では脳卒中の患者さんが筋力トレーニングや
有酸素運動などのトレーニングを行うと
どのような効果があるのでしょうか?
この疑問にSaundersらが
答えています。
Saundersらはトレーニングを
筋力トレーニングや有酸素運動を
組み合わせたものと定義しています。
トレーニングの効果を調査するために
死亡数・日常生活の自立度・歩行能力
などがどのように変化するのかを
検討しています。
※日常生活の自立度とは?
日常生活において患者さん自身で
どのぐらい行えるのかを表すものです。
この論文はかなりボリュームが多いので
要点を絞ってお伝えしたいと思います。
結果は・・・
①有酸素運動は歩行能力や
バランス能力などを改善させる
可能性がある。
②筋力増強運動はバランス能力を
改善させる可能性がある。
③有酸素運動と筋力増強運動の両方を
行った場合は歩行能力やバランス能力を
改善させる可能性がある。
私なりにまとめると、
トレーニングの方法によって
効果の期待できる項目に
(歩行能力やバランス能力)
違いがあるということが
言えるかと思います!
実際にトレーニングを行う際は、
体の状態、目標を踏まえて、
どのようなトレーニングをどのぐらいの
期間に行うことで効果が期待できるのかを
吟味しなくてはなりません。
本コラムでは脳卒中の患者さんの
トレーニング効果を解説しました。
皆さまの少しでもお役に
立てましたらとても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2022年5月14日)
(更新日:2023年12月4日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Saunders DH, Sanderson M, Hayes S, et al.
Physical fitness training for stroke patients.
Cochrane Database Syst Rev. 03 20 2020;3:
CD003316. doi:10.1002/14651858.
CD003316.pub7