リハビリコラム
人工膝関節置換術後の患者さんの歩行能力と膝関節伸展筋力
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!
今回は人工膝関節術後の患者さんの
歩行能力と膝伸展筋力を解説したいと
思います。
※膝伸展とは?
ひざをピ―ンと伸ばすことです。
今回はIwataらの論文を紹介したいと
思います!
この研究には186名の人口膝関節置換術を
受けられた患者さんが参加しました。
そして、
・膝関節の伸展筋力
・膝関節の伸展速度
・歩行速度
・Timed up go Test(TUG)
※TUGとは?
歩行能力を検査する方法の1つです。
①椅子から立ち上がる
②3m離れたコーンを回る
③椅子に座る
この①~③にかかった時間を計測します。
その結果・・・
【歩行速度】
①手術した側の膝関節伸展速度
②手術していない膝関節の伸展筋力
③膝の痛み
以上の3つが歩行速度と関係があることが
わかっています。
【TUG】
手術した側の膝関節伸展速度が
TUGの結果と関係があることが
わかっています。
【まとめ】
つまり、歩行速度もTUGの結果にも
膝関節の伸展速度が関係があるという
ことです。
膝関節伸展速度を上げるための
トレーニングの方法については
吟味する必要がありますが、
筋力だけでなく、速度にも注目が
必要だなと感じました。
本コラムでは、人工膝関節置換術後の
患者さんの歩行能力と膝関節伸展を
解説しました!
本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(執筆日:2023年1月16日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Iwata A, Sano Y, Wanaka H, Kobayashi S,
Okamoto K, Yamahara J, Inaba M, Konishi Y,
Inoue J, Kanayama A, Yamamoto S, Iwata H.
Maximum knee extension velocity without
external load is a stronger determinant of
gait function than quadriceps strength
in the early postoperative period following
total knee arthroplasty. PLoS One.
2022 Nov 22;17(11):e0276219.
doi: 10.1371/journal.pone.0276219.
PMID: 36413535; PMCID: PMC9681062.
変形性膝関節症の患者さんは股関節の筋力トレーニングも大切!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本コラムでは変形性膝関節症の患者さんの
股関節の筋力トレーニングの重要性を
解説していきたいと思います。
股関節まわりには数多くの筋肉があります。
今回は股関節を外転させる筋肉の
トレーニングに焦点を当てたいと思います。
股関節の外転(がいてん)とは脚を外側に
開く動きで、主に骨盤や大腿骨の外側の
筋肉が働きます。
股関節外転に関わる筋肉を鍛えると
どのような効果が期待できるのか?
その疑問に答えたThomas らの
論文を紹介したいと思います。
この研究では・・・
股関節外転筋の筋力トレーニングを行う
前後で、痛みやWOMACの点数の変化を
みることで効果を検証しています。
WOMACとは・・・
世界的にも行われている検査で、
痛みやこわばり、日常生活の困難さなど
膝関節の状態を点数で表すことができます。
結果は・・・
股関節外転の筋力トレーニングを行うと
痛みやWOMACの点数を減らす効果が
あることがわかりました。
WOMACの点数が減らせたということは、
痛みやこわばり、日常生活の困難さなど
膝関節の状態を改善できる効果があった
ということです。
ただ・・・
WOMACの点数が減ったのは、
・痛み
・こわばり
・日常生活の困難さ
この3つのどれが改善したためなのか、
または全てが改善したためなのか
不明な点が気になるところです。
痛みが和らいだという結果もありますので
もしかしたらその影響がWOMACの
点数を下げることにつながったのかも
しれません。
股関節外転筋のトレーニングは、
自主トレーニングでも行える方法が
あります。
膝関節の状態によってもトレーニングの
方法が変わりますので、現在リハビリに
通われている方でしたら担当の方に
ご相談いただくのも良いかも知れません。
本コラムでは変形性膝関節症の患者さんが
股関節外転の筋力トレーニングを行うと
どのような効果があるのかを解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年7月23日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Thomas DT, R S, Prabhakar AJ,
Dineshbhai PV,Eapen C.
Hip abductor strengthening in patients diagnosed
with knee osteoarthritis - a systematic review
and meta-analysis.
BMC Musculoskelet Disord. 2022Jun 29;23(1):
622. doi: 10.1186/s12891-022-05557-6.
PMID: 35768802; PMCID: PMC9241212.
どっち?変形性膝関節症にテーピングは効果あるの?効果ないの?
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
今回のコラムでは変形性膝関節症に対する
テーピングの効果を解説したいと思います。
スポーツが好きな方であれば、
お相撲さんやサッカー選手が関節の周りに
テープをつけているのを見たことが
あるのではないでしょうか。
テーピング用品はドラッグストアや
通販でも購入することができます。
スポーツの現場やケガの応急処置としても
用いられるテーピングは果たして、
変形性膝関節症の症状にも効果が
あるのでしょうか?
Mahanedらによると・・・
<実施内容>
・テーピング
・TENS(電気刺激療法)
・運動(筋トレやバランストレーニング)
<頻度・期間>
週2回・6週間
運動と電気刺激療法を行った場合に比べ
関節可動域や痛みがより改善が得られたと
報告しています。
MAOらに報告によれば・・・
<実施内容>
・テーピング
・理学療法
・薬物療法
理学療法のみ、偽のテーピングを行った
場合に比べて、痛みや筋力(等速性収縮)
改善が得られたと報告しています。
Wuらによれば・・・
<実施内容>
・テーピング
・運動
<頻度・期間>
4日~毎日・14日~6週間
(幅があるのは、この論文の種類が
メタアナリシスであるためです。)
メタアナリシスは論文のいわば総集編
と言えます。
運動のみを行う場合と比較して痛みの
緩和が得られると報告しています。
Luらによれば・・・
<実施内容>
・テーピング
<期間>
1週間~6週間
偽のテーピングを行った場合と比較して
安静時や歩行時の痛みが軽減し、
WOMAC(膝関節の状態)、関節可動域の
改善が得られたとしています。
ここまでくると、テーピングは効果が
ありそうとも思われますが、否定的な
論文もあります。
Donecらによると・・・
<比較対象>
テーピング VS 偽のテーピング
両グループともにKOOS(膝関節の状態)や
関節可動域や歩行速度の改善が得られたが、
グループ間(テーピングと偽の比較)では
有意差なしとされています。
しかし、テーピングを行った場合、
(偽テーピングを行った場合に比べて)
関節症の症状や関節可動域の効果に対する
満足度は高かったと報告しています。
Oğuzらによれば・・・
<比較対象>
運動+テーピング VS 運動
<頻度>
週3回・6週間
両グループともに、痛みや
WOMAC(膝関節の状態)の改善が得られたが
グループ間では有意差がなしとしています。
またCOMPやMMP1・MMP3のような
膝関節症の重症度や進行度を表す血液データは
運動直後には高くなる傾向があったが、
介入による効果はみられなかったと
しています。
Wageckらによれば・・・
<内容>
・テーピング
<実施期間>
・4日間
テーピングを行った場合、
偽のテーピングを行った場合と
比較して筋力やWOMAC(膝関節の状態)に
有意差はなしとしています。
まとめると・・・
テーピングを実施する場合には、運動や
電気刺激療法などを組み合わせて行う方が
良いかも知れません。
否定的な論文は、ランダム化比較試験で
あり、論文の総集編であるメタアナリシスを
見る限り、全体として一定の効果が
得られるのかなと思います。
研究間で差があるのは、テーピング方法や
介入期間に違いがあるためなのかも
知れませんし、関節症の重症度別に
分類すると、違った結果になるかも
知れません。
今後の情報が見逃せません!
変形性膝関節症の患者さんにテーピングを
行うときは、方法や実施期間など、念密に
プランニングする必要がありそうです。
もし患者さんで興味をもたれた方が
いましたら、担当スタッフの方に
ご相談いただくのも良いかも知れません。
今回は変形性膝関節症に対する
テーピングの効果を解説しました。
今回のコラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら嬉しいです。
最後までお読みくださり
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月16日)
(更新日:2024年5月27日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Wang, Zhen et al.
“Effects of externally-applied,
non-pharmacological Interventions on
short- and long-term symptoms and
inflammatory cytokine levels in patients
with knee osteoarthritis:
a systematic review and network
meta-analysis.” Frontiers in immunology
vol. 14 1309751. 14 Dec. 2023,
doi:10.3389/fimmu.2023.1309751
2) Mao HY, Hu MT, Yen YY, Lan SJ, Lee SD.
Kinesio Taping Relieves Pain and Improves
IsokineticNot Isometric Muscle Strength in Patients
with Knee OsteoarthritisA Systematic Review
and Meta-Analysis.Int J Environ Res Public Health.
10 04 2021;18(19)doi:10.3390/ijerph181910440
3)Wu H, Yao R, Wu J, Wen G, Wang Y.
Does kinesio taping plus exercise improve
pain and function in patients with knee osteoarthritis?:
A systematic review and meta-analysis of randomized
controlled trials. Front Physiol. 2022 Sep 9;13:961264.
doi: 10.3389/fphys.2022.961264. PMID: 36160871;
PMCID: PMC9500481.
4)Donec, Venta, and Raimondas Kubilius.
“The effectiveness of Kinesio Taping®
for mobility and functioning improvement
in knee osteoarthritis: a randomized,
double-blind, controlled trial.”
Clinical rehabilitation vol. 34,7 (2020):
877-889. doi:10.1177/0269215520916859
5)Oğuz, Ramazan et al.
“Effects of Exercise Training Alone and in
Combination With Kinesio Taping on Pain,
Functionality, and Biomarkers Related to
the Cartilage Metabolism in Knee Osteoarthritis.
” Cartilage vol. 13,1_suppl (2021): 1791S-1800S.
doi:10.1177/19476035211007895
6)Wageck, Bruna et al.
“Kinesio Taping does not improve
the symptoms or function of older people
with knee osteoarthritis: a randomised trial.
” Journal of physiotherapy vol. 62,3 (2016):
153-8. doi:10.1016/j.jphys.2016.05.012
変形性股関節症の患者さんが行う運動の効果とは?
こんにちは!
脳卒中・整形外科疾患の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。
本日は変形性股関節の患者さんが
行う運動の効果を解説したいと
思います。
変形性股関節症は股関節に痛みが生じ、
進行すると骨切り術や人工股関節置換術
などの手術をしなくてはならない場合も
あります。
私が病院に勤めていた頃、変形性股関節症が
進行し手術された方を担当していました。
診断されてからの経過年数が長い方が多く、
当時はその経過を踏まえつつ、
リハビリの内容を考えていました。
では変形性股関節の患者さんが行う
運動にはどのような効果が
あるのでしょうか?
この疑問に答えたFransenらの
論文を紹介したいと思います。
この研究での運動とは関節可動域運動、
筋力トレーニング、有酸素運動などの
ことです。
・痛みの強さ
・日常生活の困難さ
・生活の質(生活の満足度)
などの運動前後での変化をみることで
運動の効果を調査しています。
結果は・・・
運動を行うと痛みや日常生活の
困難さは、運動直後から改善がみられ、
その効果は3ヶ月~6ヶ月は持続する
ということがわかりました。
実際に運動を行う時には、
お体の状態、目標やご希望を踏まえ、
どのような運動をどのぐらいを
行うのかを吟味することが大切です!
変形性股関節症は進行の度合いが
関係しますので、運動のみでは
なかなか効果が得られないことも
あるかも知れません。
クリニックや病院などに通院されて
いる方でしたら、担当スタッフに
相談するのも良いかも知れません。
本コラムでは変形性股関節症の患者さんが
行う運動の効果を解説しました。
皆さまの何かのお役に立てましたら
とても嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
(更新日:2022年10月25日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1) Fransen M, McConnell S,
Hernandez-Molina G,Reichenbach S.
Exercise for osteoarthritis of the hip.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 22;(4):
CD007912. doi: 10.1002/14651858.
CD007912.pub2.
PMID: 24756895.
必見!膝の手術後のリハビリ!運動イメージ練習の効果
こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)代表の
市川です。
今回は人工膝関節置換術(膝の手術)を
行った後のリハビリについて解説を
したいと思います!
私が病院で働いていた時は、
膝を手術した患者さんのリハビリも
担当することがありました。
当時は手術後の経過をみながら、医師と
相談し筋力トレーニングや歩行練習など
リハビリを進めていきました。
今回は「運動イメージ練習」という
リハビリを紹介したいと思います。
初めてお聞きになった方も
いらっしゃるのではないでしょうか?
運動イメージ練習とは・・・
実際は運動せずに、運動していることを
頭の中で想像する(イメージ)方法です。
膝を手術後の患者さんに
運動イメージ練習を行うと
どのような効果があるのか?
その疑問に答えたLi らの
論文を紹介したいと思います。
この論文では・・・
①通常リハビリ+運動イメージ練習あり
②通常リハビリ+運動イメージ練習なし
この2つのグループに分けて効果を
検証しています。
その結果・・・
運動イメージ練習を行ったグループは
(運動イメージ練習を行わなかった
グループに比べ)筋力向上や痛みの軽減、
歩行能力の向上がみられました。
運動イメージ練習の良いところは、
場所を選ばず、自主トレーニング
として行える点です。
※運動をきちんとイメージするには
少しコツが必要です。
運動イメージ練習に興味をもたれた方は、
リハビリを担当されているスタッフに
ご相談いただくのも良いかも知れません!
今回は、膝の手術後のリハビリの1つ、
運動イメージ練習を解説しました。
本コラムが少しでも皆様の
お役に立てましたら嬉しいです
最後までお読みくださり
ありがとうございました。
(執筆日:2022年6月3日)
(更新日:2022年12月29日)
(執筆者:市川 貴章)
参考文献
1)Li R, Du J, Yang K, Wang X,Wang W.
Effectiveness of motor imageryforimproving
functional performanceaftertotal knee arthroplasty:
a systematic reviewwith meta-analysis.
J Orthop Surg Res. Feb 022022;17(1):65.
doi:10.1186/s13018-022-02946-4